IOCが「eスポーツ」の五輪種目採用に下心丸出し!それでも立ち塞がる「4つの大障害」

 IOC(国際オリンピック委員会)は10月16日にインドのムンバイで行った総会で、28年の米・ロサンゼルス五輪で野球・ソフトボールなど5競技を加えることを一括で承認した。

 日本にとって野球とソフトボールはお家芸。それゆえに歓迎すべきニュースだが、バッハ会長は5競技を追加したことについて「アメリカのスポーツ文化に沿ったもの」としているが、開催地の「文化に沿って」競技が追加されたり削除されたりしたのではたまったものではないだろう。

 また、これとは別にIOCが、下心丸出しなのがeスポーツの扱いだ。eスポーツの新たな大会を行う構想を発表し、今年新設された「eスポーツ委員会」で詳細を検討するとしたからだ。スポーツジャーナリストが話す。

「IOCでは若者のスポーツ離れが危惧され、近年はサーフィンやスポーツクライミング、ブレイキンといった若者向けのスポーツを競技種目に追加してきました。次のロス五輪でも、野球・ソフトボールのほか、フラッグフットボール、クリケット、ラクロス、スカッシュの採用を決定しています。eスポーツもその流れで検討されている種目の1つですが、やはりどうしても『ゲームはスポーツなのか?』という違和感が否めない。ただ一方で、スポーツの多様性を支持する声もあり、6月にはIOC主催の国際大会がシンガポールで開催され、野球のパワフルプロ野球、レーシングゲームのグランツーリスモなど、スポーツ系の10ゲームで競技が行われました」

 ちなみに、競技人口が多くてもバトルやシューティング系ゲームは「差別や暴力」の観点から、競技としてハナから採用されることはない。

 IOCでは17年にeスポーツを「スポーツとみなすことができる」との声明を発表。その後のコロナ禍の巣ごもり生活が環境的に後押しをした経緯もある。日本でも19年の茨城国体で関連行事として大会が行われたり、先日まで開催されていた中国・杭州のアジア大会でも、eスポーツが正式競技として採用されている。

「eスポーツ採用の問題点としては、ゲームのバージョン更新やアップデートによる時代的なルールの不統一、著作権の問題、ゲーム産業の利権などが懸念されています。アジア大会でも、採用された種目に中国でしかプレーできないゲームが含まれていて、指摘されている課題の深さが浮き彫りになりました。また、19年にはWHO(世界保健機関)がゲーム依存を『ゲーム障害』として国際疾病と認定するなど、ゲームには健康被害の問題がありますが、この点の議論が置き去りになっているのです」(前出・スポーツジャーナリスト)

 またゲーム業界では、アメリカと日本、中国のテンセントのような企業のビジネス上の覇権争いがあって、競技の採用にはそれがモロに反映する可能性もある。商業主義が批判されるIOCにとってはそこが旨味なのだろうが、競技種目に採用された際には、企業間の対立そのものが五輪の場で国際問題として浮上するかもしれない。
 
(猫間滋)

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