球数制限なんてクソくらえ!ソフト上野由岐子は顔面骨折でも投げまくる

 4月30日、下顎骨骨折で緊急手術したソフトボール・上野由岐子が練習を再開した。練習といってもまだ肩慣らし程度だが、4月27日の試合中、左あごに打球が直撃した当初は「全治3カ月強」と伝えられていた。わずか1カ月での練習再開にも驚きだが、8月30日から始まるジャパンカップに「投げる!」というのだ。

「当面のソフトボールの大きな大会といえば、6月22日から始まる日米対抗、8月30日開幕のジャパンカップ(国際女子ソフトボール大会)です。日本協会はジャパンカップを戦う代表メンバーを発表していますが、そのなかに上野の名前もありました」(体育協会詰め記者)

 当初、上野の代表入りはチームに活を入れるためで、東京五輪本番までは無理をさせないと見られていた。しかしこの様子では、ジャパンカップで主力として長いイニングを投げるようだ。

「宇津木麗華監督は上野の状況について聞かれると、『焦る必要はない』と話していますが、額面通りには受け止められません。上野は投げたがりで、納得するまで投げないと気が済まないタイプ。そういった上野の性格を見抜いたうえで、『ジャパンカップに投げさせるから、今は無理をするな』と言いたかったのでしょう」(同前)

 上野といえば、ソフトボールが公式種目だった北京五輪で準決勝、決勝進出戦、決勝の3試合を投げ抜いた鉄腕として知られている。2日間3試合で413球を投げ抜いた闘志はもちろんだが、自身の状態に応じたピッチングにも定評がある。連投でストレートが走っていないと分かれば、変化球中心のスタイルに切り換えることができる。

「変化球も多彩というだけではなく、粘り強く投げ、ファウルや打ち損じを誘いながらカウントを整え、一人ずつ料理していくピッチングです」(関係者)

 こうした持ち味からも、自ずと投球数が多くなっていくタイプであることがわかる。つまり、上野は今流行りの投球制限などものともしない異次元の存在なのだ。

 もっとも、骨折した箇所は左あご。食事もままならないようだが、上野はこの夏、甲子園球児も顔負けの「鉄のオンナ」のピッチングを披露してくれそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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