大地震で崩壊する「81年耐震基準」神話(1)大型地震は連動しやすい

 1月26日現在、能登半島地震の死者は236人となった。死因の大半は、津波でも火災でもなく家屋の倒壊による圧死。発生が近いとされる「南海トラフ地震」には、第2、第3の大地震が連動するともささやかれ、マイホームの耐震強度を改めて見直すことが、国民の喫緊の課題だとなっているのだが…。

 地震の発生は、地下の岩盤(プレート)の衝突による強力な力の働きであることは知られている。日本は列島と近海の真下に複数のプレートが存在し、それぞれ密接に影響しあっているため、単一のプレート上に存在する国よりも、必然的に地震の回数が多くなるのだ。

 具体的には、東日本から北海道にかけては北米プレート、西日本はユーラシアプレートに乗っている。そしてその中間、伊豆半島あたりで少しだけ表層に顔を出す形のフィリピン海プレートが、北米&ユーラシアプレートの下に潜り込んでいる。さらにフィリピン海プレートと北米プレートの下には、太平洋プレートが潜り込んでいるのだ。自然災害科学の専門家である、立命館大学環太平洋文明研究センター・高橋学特任教授が解説する。

「一番下に潜っている太平洋プレートは、年間10センチほど東から西に移動しています。つまり太平洋プレートは、北米プレートとフィリピン海プレートを常に圧縮している。それに伴ってフィリピン海プレートも北米、ユーラシアの両プレートに影響を及ぼしています。能登半島はユーラシアプレートと北米プレートとの境界上の付近にあり、フィリピン海プレートの動きが影響して衝突したため、今回の地震が起きたのです」

 近年「次に来る」と言われる、いわゆる「南海トラフ地震」は、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの衝突で起きるとされる地震だ。日本周辺のトラフは他に駿河トラフ、相模トラフがある。ごく簡単に言えばプレート同士の接触点で比較的浅いものがトラフ、深いものは海溝と分類される。地震が必ずトラフで発生するわけではないが、発生しやすいスポットであることは間違いない。それどころか、

「地震の発生がプレートの動きに影響を与え、それにより発生地に近い場所で再び地震が起きるのが連動型地震のメカニズムで、大型地震は連動しやすい。過去には1944年に東南海地震、45年に三河地震、46年に南海地震と、近い地域で3連動したこともあり、他にも多数の例が存在します。仮に南海トラフ地震が起きれば東海地震や東南海地震の連動が危惧されていて、私はこれを『スーパー南海地震』と呼んでいます。そこにさらに連動して、相模トラフ周辺を震源地とする、首都圏での大型地震が起きても、何ら不思議ではありません」(高橋氏)

 相模トラフはかつて1923年に、大正関東地震の震源地となった。これが「関東大震災」である。南海トラフと首都直下、凶悪な2大地震が日本列島を直撃する可能性は、決して否定できない、というのだ。

(つづく)

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