さらに今回のマップに付け加えたのが、文部科学省の特別機関・地震調査研究推進本部によって、地震発生危険度最上級の「Sランク」に指定(24年1月時点)され、その中でも30年以内に断層がずれて大きな地震が発生するリスクが8%以上とされる「8つの活断層」だ。
活断層に起因する地震は、95年の阪神・淡路大震災、16年の熊本地震、そして今年1月の能登半島地震などが挙げられる。
トラフなどの変動が原因となる海溝型地震は、数十年単位で周期的に発生するが、活断層による地震はさらに長い年月にわたってエネルギーが蓄積されるため、発生時期を予測するのは極めて困難だ。そのため、発生リスクが低く設定されがちになる。前述の地震調査研究推進本部が公表した「全国地震動予測地図(20年度版最新)」では、能登半島の発生率が低く評価されており、今年1月の大地震は政府としても青天の霹靂。緊急車両を通行させるための「道路啓開計画」を策定していなかったことが、初動対応の遅れを招いたと言われている。
防災シンクタンク職員は次のように話す。
「発生リスクが8%というのは、かなりの低確率に聞こえるかもしれません。ですが、阪神・淡路大震災が発生する直前の評価が8%だったのです。活断層地震は震源が浅い直下型の地震です。それも住民が密集するような都市部では甚大な被害を招きます」
今回記載した活断層の中で、地震発生率が最も高いのは、長野県から山梨県に伸びる糸魚川―静岡構造線断層帯の30%(数値は最大値、以下同)だ。
「山間部を南北に縦断するように位置しており、発生時の予測はM7.4~7.6とされます。能登半島地震がそうであったように、交通が分断され、内陸部が陸の孤島と化すリスクも高い」(シンクタンク職員)
続いては、熊本県から鹿児島県北部に伸びる、発生率16%の日奈久断層帯。北部に連結する布田川断層帯と合わせれば全長が101キロにも及び、九州では最長の断層帯である。
四国で唯一8%を超えてきたのが中央構造線断層帯の区分のひとつ、石鎚山脈北縁西部区間(12%)だ。
「中央構造線断層帯は、全体としては関東から中部、近畿、四国を通り九州にかけて形成された、世界でも最長級の断層帯です。区分けされた隣接する断層が同時に活動する可能性もあり、その長さもあって各地で注意が必要になってきます」(シンクタンク)
他にも、発生率の高い順で列挙すると富士山南麓から駿河湾に流れる富士川河口断層帯(18%)、長野県中西部に分布する境峠・神谷断層帯(13%)、岐阜県と長野県にまたがる阿寺断層帯(11%)、半島を中心に震度7の強い揺れが予想される三浦半島断層群(11%)、広島県から山口県に走る安芸灘断層帯(10%)となる。いずれも、近隣住民にとっては不気味で危険な存在だと言えよう。シンクタンク職員はこう言う。
「長さが20キロ以上で、社会・経済に大きな影響を与えかねない活断層は『主要活断層』と呼ばれ、全国に114も存在しています。そのうち、Sランクは31。自分が住んでいる地域にも、こうした危険度の高い活断層があると考えるべき。確認しておきたいですね」
もはや、日本列島において、完全に安全な場所などない。少なくとも被災時に慌てふためかないよう、備えだけは万全を期したい。
*週刊アサヒ芸能8月29日号掲載