山崎元・大江英樹「庶民の救世主」が遺したバラ色運用術(2)個人向け国債は「変動10年」が推し

 虎の子の大金を持ち「絶対に元本割れは嫌だ」という人にお勧めしたいのが個人向け国債だ。

 大金を現金のまま自宅に置く、いわゆる「タンス預金」は、物騒であるばかりか利息を生まない。どこかに預けるか、金融商品を買う方がいい。

 その際、多くの人が最初に考えるのは銀行預金だが、銀行は見かけよりも不安定なビジネスなので、将来にわたって絶対安心とは言い切れない。また、面倒な点が多く、金利面でもいい条件ばかりではない。

 例えば、退職金に対象を限定した円定期預金プランの中には、年1%の金利が付くものもあり、期間限定で高金利を得る目的であれば、決して悪い運用対象とは言い切れない。

 だが、高金利の円定期預金では、同時に投資信託やファンドラップを購入しなくてはならないケースもある。円定期預金で少し高い金利が付いても、ファンドラップで年率1%以上の投資顧問料などのコストがかかることもあるのだ。

 この点を考えると、大きなカネを置いておくのに最も安心な対象は銀行預金ではなく「個人向け国債」なのだ。個人向け国債にはいくつかタイプがあるが、「変動10年」という、半年ごとに適用率を見直す満期10年のタイプがお勧めだ。

 まず、元利金の支払いは国が保証するので、銀行預金よりも安全。加えて、半年ごとに実勢金利に応じて適用率が見直されるため、金利上昇の恩恵も受けられる。常にベストとは限らないが、条件的には無難な投資対象と言えるだろう。

 一方、大江氏が長年提唱してきたのが、個人型確定拠出年金の活用だ。

 2016年の法改正により、それまで主に自営業やフリーランスなどの人たちと、「企業年金制度」のない会社に勤めているサラリーマンだけに限定されていた個人型確定拠出年金の利用範囲が拡大し、ほぼ誰でも加入できるようになった。

 個人型確定拠出年金の最大のメリットは、掛け金の全額が所得控除されることと、実質的に年利で15%とか20%のリターンが得られること。老後資産形成の手段としてはこれ以上有利なものはないので、利用しない手はないと言っていいだろう。

「おふたりに共通していたのは、お金を増やすことはあくまで手段であって、本来の目的は幸せを得ることに『使う』という考えです。ヤマゲンさんはお酒と競馬が大好きでしたし、大江さんも旅行と美食が趣味でした。それゆえ、破綻を来す可能性のある高リスクの投資商品は勧めなかった。そこが多くの個人投資家に支持された理由だと思いますね」(山崎氏)

 庶民に向け、有用な資産運用でクラ~い老後をバラ色に変える術を説いた2賢人に合掌!

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