首都圏には羽田と成田、茨城の3カ所の空港があるが、茨城以外の北関東在住者にとってはいずれの空港もアクセスが容易でないのがネックとなっている。しかし、そうした問題を解消すべく、埼玉県北部と群馬県南部の両県にまたがる地域に新空港を建設する計画が浮上している。
「埼玉新聞」が1月4日に報じた記事によると、埼玉県の本庄市、深谷市、美里町、神川町、上里町と、群馬県の前橋市、高崎市、伊勢崎市、藤岡市、玉村町が参加する「上武連携構想」の中で生まれたものだという。現時点ではあくまで構想ながら、東京都心から70~100キロ圏内に位置するこの地域に空港が誕生した場合、人の流れが大きく変わる可能性がある。
「航空会社が支払う空港使用料は羽田や成田より安く設定されることが予想されるため、中堅エアラインやLCCが就航するでしょう。また、他の地方空港のように東アジア地域からの国際線の乗り入れも期待できます」(経済ジャーナリスト)
そして、空港があれば、人だけでなく物流の新たな拠点にもなりうる。
「利根川流域のこの地域には数多くの工業団地があり、航空宇宙関連の部品や半導体を製造するメーカーも集まっています。スバルやホンダのように拠点工場を置く大企業もある。さらに、北関東は首都圏の一大農業生産地。短時間で全国に出荷可能となり、地元経済に与えるメリットは大きい」(前出・ジャーナリスト)
そもそも上武連携構想は経済圏の確立による地域振興が目標の1つ。全市町の人口は合計110万人と政令指定都市に匹敵する規模であり、面積も東京都のほぼ3分の2と広大だ。
「10市町は空港整備に向けて合意していますが、問題は莫大な建設費。政府は離島以外の地方空港を新設しないとの方針で、最後の地方空港と言われた09年開港の静岡空港では、静岡県が総事業費の9割近くを占める約1655億円を負担しています」(前出・ジャーナリスト)
支出額が莫大になれば住民からの反対も予想され、空港が2県にまたがることで負担の割合をめぐって意見が対立することも予想される。構想止まりで終わる可能性もあり、新空港という「跳んで埼玉」ならぬ「飛んで埼玉」の実現にはまだまだ課題が山積みのようだ。