埼玉県人が東京に入るには交通手形が必要で、しかも高級百貨店に入ろうものなら「埼玉狩り」にあう。そして飲食店には都民向けとは別個に、埼玉県人向けのメニューが並ぶ。その中に「雑草まぜご飯」というのもあって、「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」と叫ばれる。
『パタリロ』などで有名な漫画家の魔夜峰央氏が1982年に発表した、埼玉県人をこれでもかと卑下した自虐マンガの『翔んで埼玉』の中の設定だが、SNS時代で2015年に突然話題になって復刊。19年には二階堂ふみとGACKTのダブル主演で映画化され話題になった。これらはマンガ内の設定だが、「それなら草でも食べてやろう」というわけではないだろうが、実際に「そこらへんの草」を使ったメニューが売られ、連日完売の大人気だという。
題して「そこらへんの草天丼」。売っているのは「クレヨンしんちゃん」でもおなじみの埼玉県春日部市の地元スーパーだ。
「家族経営のお店で、映画が公開された時に常連客がアシタバを持ってきた際に、その店のおばちゃんが調理して『そこらへんの草てんぷら』として販売したところ予想外の反響だったそうです。そこで、アシタバや葉タマネギ、シソなどのほかのそこらへんの草も加えて天丼にしたところ、連日完売の大人気となったそうです」(週刊誌記者)
これは町おこしにもつながるということで、草を扱う店は春日部市を中心に広がり、スタンプラリーまで行われているという。
これは埼玉だけの話だが、数年前から全国的に「草」が静かなブームとなっていて、昨年辺りから特に注目が集まっている。
「例えば『雑草栽培セット』という商品がヴィレッジヴァンガードなどの雑貨店で売られていますが、2月末の発売で1カ月半で3000個も売れました。もちろん名前の通り雑草を育てるキットで、ひび割れたブロックに水をかけると草が生えてくるというものです」(前出・記者)
生えてくるのはクローバーやたんぽぽ、芝など、本当に道端のブロックの間から生えているような草で、どんな草が生えてくるかは実際に育ててみてからのお楽しみだという。
雑草に関する書籍も多数出版されていて、雑草が付ける花の美しさを紹介する『美しき小さな雑草の花図鑑』は中でも隠れたベストセラー商品で、昨年には『もっと美しき・・・』との続編も出版された。
コロナの外出自粛と密回避の生活スタイルの中、ほんの身近な身の回りに人々の目が向くようになったということか。
(猫間滋)