スペインの名門レアル・マドリードからマジョルカへ期限付きで移籍していた日本代表MF久保建英が、9月1日に行われたバレンシア戦に途中出場し、スペインリーグ1部デビューを果たした。
マジョルカといえば、かつて日本代表の家長昭博や大久保嘉人らが所属したこともあるクラブであり、久保は今後このマジョルカで自身の経験値を高めていくことになるが、当初の目標でもある“レアルのトップチーム”で活躍するには、久保と類似したルートを歩んだ3人の先輩を意識する必要があるだろう。
まず、レアルというクラブに限らず、世界最高クラスの強豪チームはヨーロッパ中のあらゆるチームに若手プレーヤーをレンタル移籍でばら撒き、数年後にその中から圧倒的な成長と実績を残した選手だけを呼び戻すというスタイルを伝統的に採用してきた。
そうした多くの“レンタル組”の中でも、近年稀に見る成功例といえば、現在のレアルで不動の地位を確立しているスペイン代表DFダニエル・カルバハルとスペイン代表MFマルコ・アセンシオだ。前者は2012年まで久保が在籍していたレアルBチームで戦っていたが、トップチームでの出番は与えられないまま、ドイツのレヴァークーゼンへレンタルで加入すると、わずか1シーズンで自らの価値を証明。2013年にはレアルから呼び戻され、すぐさまスタメンを確保した“シンデレラボーイ”である。
また、アセンシオの場合は久保とポジションやタイプ、経緯も非常に似通っている為、最も“手本”に掲げるべきプレーヤーかもしれない。2014年まで、現在の久保が所属するマジョルカでプレーしていたアセンシオは18歳でその天賦の才能を認められ、獲得オファーが殺到。その中からレアル行きを選択するも、すぐさまトップチームでプレーすることはなく2シーズンはレンタル先のクラブで過ごすことに。継続的な出場機会を与えられた18歳はひと回りもふた回りも成長し、2016年からは本格的にレアルでのキャリアをスタートさせている。
「カルバハルやアセンシオのケースはあまりにも成功し過ぎた例かもしれませんが、他にもブラジル代表MFカゼミーロもレンタルバックしてレアルの先発に定着したプレーヤーであり、久保が目指すべき先輩の1人です。また、以前に比べてレアルは若手に対して信頼を寄せている傾向にあります。もちろん大前提としてレンタル先のマジョルカで突出した結果を出さなければいけませんが、ここは日本の神童の秘めたる可能性を信じるしかありませんね」(スポーツライター)
流暢なスペイン語や十八番でもあるボールコントロール技術は新天地マジョルカでも大いに効果を発揮するだろう。一歩ずつ冷静かつ大胆に、久保の確かな成長を見守りたいところである。
(木村慎吾)