原発処理水「反日暴挙」で自ら首を絞める習近平【2023年後半BEST】

 原発処理水の海洋放出に反発する中国の日本産水産物の輸入停止により、同国への輸出額は対前年比で9月が90%以上、10月は83%以上も下回っている。そんな過剰なまでの対日攻撃の裏に見え隠れするのが、習近平政権の思惑だ。国民に「原発の恐怖」を刷り込んでいるというのだが、実は、それがブーメランとなって返ってくる可能性があるようで…。(以下は8月31日配信記事を再録)

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 東京電力が8月24日、福島第一原発処理水の海洋放出を開始すると、中国、韓国が反対の声を上げたが、中でも中国の反発は尋常でないレベルでエスカレートしている。

 在中日本大使館、日本人学校への投石に始まり、東京電力、福島県庁、市役所、福島の飲食店などに嫌がらせの迷惑電話を集中させる一方で、ネット上には日本製品の不買運動を扇動する動画が数多く溢れていて、中国進出の工場、スーパー、飲食店などが襲撃されたり、日本車が破壊される事態が発生してもおかしくない状況にある。

 それにしても、完璧な情報統制が確立している中国で、国民がこうも早く日本の原発処理水の海洋放出を知り、すぐさま怒りを示すことができるのだろうか。実に不思議だ。

 日本の上場企業に勤める楊玄統(仮名=38歳)に話を聞くと、こう説明した。

「一般的に考えて、外国にまで嫌がらせをする酔狂な中国人はいません。習近平の時代になって、中国人は日頃の言動、行動、生活態度などが得点で表され、優か不良かきめ細かく分類されるようになっています。つまり、得点をゲットするチャンスと考えた人がいたのでしょう」

 だが、中国共産党は自国の原子力発電の未来に怯えているのが現実だ。

 中国は2007年にGDPで日本を追い抜くと、米国に追い付き追い越すことを国家目標に掲げ、経済成長の基礎であり原動力となるエネルギー確保に大胆な戦略を打ち出した。その中心が石炭、石油から原子力への転換である。

 中国の原子力発電所は1994年に運転開始し、今や米国の93基、フランスの56基に次ぐ世界3位の51基を有する。しかも建設中が19基、着工目前が24基、計画中が150基もあるのだ。

 原子力を専門とするエンジニアやオペレーターを育成するには10年単位の経験が不可欠というのが国際的な常識だが、中国にはその余裕がまったく無い。しかも、その貴重なエンジニアでさえ、肝心な技術思想が統一されていないというのである。

 筆者は上海に生活した際、元三菱重工原子力部門退職後、中国核工業集団のグループ会社の顧問をしていたエンジニアと友人関係になったが、彼は「中国のスピード、資金には驚く。しかし、人材は粗製乱造、しかも技術に一貫性がないから、いずれ問題を起こす」と語っていた。

 実際、中国の原子力発電は小さな事故を繰り返している。

 共同電によれば、中国で2021年に調査された原発17カ所のうち13カ所で、福島第一原発処理水のトリチウム放出予定量の上限を大きく上回る汚染水を垂れ流していたというから、排水一つとっても日本に言いがかりをつける資格はない。

 今回の中国共産党による福島第一の処理水攻撃は、14億の国民に「原発は怖い・危険」ということを強く植え付けた。このため、もし中国で原発事故が起こったら、情報統制をして抑えることは不可能だ。

 それは、習近平政府の断末魔だ。

(団勇人・ジャーナリスト)

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