厚労省が9月に取りまとめた「人口動態統計」(2022年)では、日本の特殊出生率は1.26で前年の1.30より低下して過去最低だが、もっと深刻で、世界的に「国家が消滅するのではないか」とまで懸念されているのが韓国だ。
「韓国の2022年の特殊出生率は0.78で、先進国を中心に加盟する経済協力開発機構(OECD)の中で最低でした。このあまりの低さに、男女の賃金格差の研究で今年のノーベル経済学賞を受賞したハーバード大学のクローディア・ゴールデン教授もこれに注目。最近ではアメリカのニュヨーク・タイムズも『韓国は消滅するか』というコラムを掲載するなど、国際的な懸念事項にまでなっています。理由はやはり若年層の婚姻率の低下などですが、その背景として、就職難、都市部の地価高騰、重い教育費負担があります」(経済ジャーナリスト)
日本でもかつては「消滅可能性都市」が公表されて、そこに挙げられた自治体は大いに危機感を抱いたものだが、「国家消滅」となるとその比ではない。
韓国の人口は、21年段階で5174万人。そして韓国の統計庁が昨年公表した「2040年の人口展望」によれば、60年代後半には3500万人以下に落ち込むとされている。出生率が現在進行形でさらに落ち込み、すると当然、生産年齢人口も35年には3000万人を割るとされ、そうなると国力はグンと落ちる。また死亡数が拡大する縮小スパイラルがここに加わり、もうそうなると大量の外国人を受け入れるより他なくなる。
「晩婚化や出生率の低下で少子化が進み、人口が縮小して国の成長率に陰りが現れるのはいわゆる先進国病というやつで先進国なら避けては通れませんが、もともと韓国は強烈な学歴社会の過当競争な上に、儒教的道徳の文化があって家事や育児の分担も遅れているので、日本に比べて女性の社会進出がよりしにくい。ソウル一極集中のために住宅費がベラボウに高いのもやはり日本より上。そのためエリート学生は韓国脱出を希望し、若者の『自殺大国』としても知られています」(同)
ソウルのマンションに10億ウォン(日本円で約1億円)以下の物件はないと言われ、支持率低迷でレームダック状態だった文在寅政権末期は、不動産政策で全ての人々の反感を買って退陣となったほど。その文大統領が現在の尹悦錫氏に代わったのが昨年5月のことだったから、韓国の“存亡の危機”回避はまだ途に就いたばかりだ。
(猫間滋)