ラスト無頼作家・伊集院静「カネと女」秘録(2)篠ひろ子は入籍時に「44年間、生きてきてよかった」

 その後も、無頼作家のモテエピソードは枚挙にいとまがない。銀座に足繁く通いホステスを口説き、京都祇園の芸妓・佳つ乃(59)と同棲していたこともあった。その別れ際「思い出をください」と言われた時は、何と一軒家をプレゼントした。それこそが無頼の魅力の一つであると、芸能リポーターの石川敏男氏は語る。

「彼は人間として女性と接していて、金銭面での援助もきちんとする。別れた後に彼の優しさがしっかり残るんです。だから別れた女性は、彼のことを決して悪く言わない。やはり彼はカッコいい。ギャンブルに負けても愚痴はこぼさない。酒を飲んでも乱れない。小さいことは気にしない。男、女関係なく伊集院さんに会った人は、彼のことが好きになる」

 伊達男が最後に選んだ女性は、夏目雅子のことを姉妹のように可愛がっていた女優の篠ひろ子(75)だった。

「1992年、篠さんは結婚してから女優としての活動は一切していません。仕事を捨ててまで伊集院さんと寄り添っていたかった。それだけ惚れていたのでしょうね」(古参芸能デスク)

 2人は、夏目の七回忌を待って入籍。当時44歳だった篠は「44年間、生きてきてよかった」と記者会見で幸せそうに語っていたほどだった。

 男も女も、その無頼な姿に心酔してしまう。芸能界にも彼を〝兄貴〟と慕う人物は少なくない。その1人が芸人のカンニング竹山(52)だ。

「数年前、偶然に湯島の寿司店で竹山さんと伊集院さんが出くわして、挨拶したそうです。かねてより、伊集院さんが竹山さんの活躍を見ていたらしく、『芸能界で困ったり、どうしようもないことが起こったりしたら言いなさい、どうにかいいようにしてやる』と言ってくれたそうです」(スポーツ紙記者)

 それだけにとどまらず、伊集院氏は、竹山と一緒にいたスタッフにも一声かけたそうだ。古参デスクが続ける。

「『(自分は)竹山の親代わりみたいなもの。ひとつ、竹山を頼みます』と頭を下げたと聞きました。さらに竹山さんに『お前ばっかり外でいいもの食って、かみさんにちゃんと感謝してるか? かみさんにこれを持って帰ってやれ!』と土産の寿司を持たせてくれたと言います。それに竹山さんは『大人のカッコよさを見た。憧れていた通り、伊集院さんは粋な大人だった』と大感激。この間も、伊集院さんを慕う先輩たちと〝弔いギャンブル〟をしたそうです」

 一度その人柄に触れれば、誰もが虜になる魅力を持つ漢だった。

 週刊文春の人生相談コーナーで「わからぬことだらけで死んでしまうのが私たちだ。それでいいんじゃないか」と、人生を喝破する名文句を残した孤高の作家に合掌!

*「週刊アサヒ芸能」12月14日号掲載

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