ソフトバンク巨額詐欺事件で浮上した芸能人「人脈をつなげた“兄貴分”が不審死していた」

 11月8日、警視庁捜査2課は、通信大手ソフトバンク(以下SB)の架空のシステム開発事業をでっち上げて、会社経営者や投資家らから少なくとも12億円以上を騙し取ったとされるSB元統括部長の清水亮容疑者(47)、同社元課長の枡田健吾容疑者(42)、元アパレル会社社長の森田真伍容疑者(41)の3人を、詐欺の疑いで逮捕した。事件の背景を探ると、派手な人脈が浮かび上がってきたのだ。

「清水はSBの統括部長という要職に就き、IT業界では名の知れた人物でした。清水のプレゼンは非常に流暢で、『自分にはSB社内で様々な決裁権がある。最後まで責任を持って遂行する』と自信満々な様子で語っていた。まさか詐欺事件だと疑う余地はまったくありませんでした‥‥」

 こう話すのは、都内でIT会社を経営する被害者の1人、Aさんである。

「22年1月に東京・竹芝のSB本社40階にある同社幹部クラスのみが使用できる東京湾一望のガラス張りの会議室で、主に清水から説明を受けました。全国各地にあるSBショップのシステム入れ替えの案件があって、その投資を募っていた。出資者には4カ月以内に元本プラス20%の配当をつけて返金するという内容でした。合同説明会ではなくて、私は個別で説明を受けた」(Aさん)

 SBの企業ロゴが入った50数ページにも及ぶプレゼン資料や実際にシステム開発するベンダー企業と締結した契約書も用意されていた。さらには出資者とは秘密保持契約を結び、基本的なやりとりが秘匿性の高いアプリ「シグナル」で行われるなど、実に用意周到で悪質な手口だったという。気になるのは、清水容疑者のような社会的地位のあるエリート社員が、どうして詐欺事件に手を染めることになったのかだ。

「副業で会社を設立していた清水は、投資していた蓄電池の事業が失敗し、どうやら数億円の負債を抱えていたようなんです。そうした中、たまたま中学校時代の同級生を通じて森田を紹介された」(捜査関係者)

 森田容疑者は別の投資詐欺で、お笑いコンビTKOの木本武宏(52)や平成ノブシコブシ・吉村崇(43)ら複数の芸能人たちからも多額の金を騙し取ってきたとされる、いわく付きの人物だ。

「森田は芸能人脈をひけらかすことで、相手を信用させようとしていた感がある。クオーターの2世タレントを彼女にしていたことがあったり、『浜崎あゆみのバックバンドでドラムを叩いていた』などとうそぶくこともありました」(Aさん)

 とはいえ、今回の投資詐欺は、SBの社内事情に精通していないと実行は不可能だったはずである。

「森田が『SBのブランド力を利用すること』を清水に提案し、社内の様々な情報にアクセスできる立場の清水が具体的な投資詐欺のスキームを構築したと見られている。清水は直属の部下・枡田に精巧な資料作成を指示した。実は、枡田も清水と同様に副業で会社を設立して、清水の事業に数百万円を出資していました。その金を回収するために、協力するしかなかったのでしょう」(前出・捜査関係者)

 前代未聞の事件だが、被害者への返金の可能性は極めて薄いという。

「今回の投資詐欺事件で集めた金の大半は、森田の口座に流れたようですが、森田はその金を都内の芸能事務所社長・Kに預けていた。Kは森田に芸能人たちを紹介していた、いわば兄貴分のような存在だった。ところが昨年11月、Kが山梨県の河口湖で不審死して‥‥。森田は海外にも逃亡していたし、逮捕前に会った時には『自分の手元にはもう金はほとんどない』と言っていましたよ」(森田容疑者の知人)

 事件の全容解明が待たれる。

*画像はソフトバンク本社ビル

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