ソフトバンクも巨額出資、サム・アルトマンが進める「核融合発電」で脱原発なるか

 中国の新興企業「ディープシーク」が開発した高性能で低コストの生成AIの登場で、2つも3つもギアチェンジした感のあるAI開発競争。一方、ソフトバンクの孫正義会長兼社長とオープンAIのサム・アルトマンCEOらは「スターゲート計画」をブチ上げ、今後4年間で78兆円もの巨費がAIインフラ構築のために投資されることになった。ディープシークがAI汎用化の流れだとすれば、スターゲートは最先端を究める方向とでも言うべきか。いずれにせよAI開発競争はより活発化、となると巨大データセンター建設などで膨大な水と電力が必要になるわけで、気になるのは環境負荷の増大だ。そこでにわかに注目されるのが、生成AIと同じく夢の技術とされる「核融合発電」である。

「巨大データセンター建設の電力調達のために、GAFA系企業は原発推進を同時並行で進め、稼働中の原発の再稼働なども計画されています。と同時に急ピッチで進められているのが『核融合発電』の実用化。具体的には、スターゲート計画のパートナー企業であるマイクロソフトは核融合発電のスタートアップ『ヘリオン・エナジー』と、2028年開始予定で既に電力供給契約を結んでいます。ヘリオンはソフトバンクからも約650億円を調達したと発表しており、そのヘリオンの会長こそが個人で約570億円を出資しているサム・アルトマン。スターゲート計画はデータセンターの建設から核融合発電からの電力調達まで、サム・アルトマン自らが率先して進めているというわけです」(経済ジャーナリスト)

 このほか、マサチューセッツ工科大学発の核融合ベンチャーの「コモンウェルス・フュージョン・システムズ」にはグーグルやアマゾンのジェフ・ベゾスCEO、ビル・ゲイツ氏らが出資。ノーベル化学賞を受賞した、あの中村修二氏らが設立した米スタートアップ「ブルー・レーザー・フュージョン」には、やはりソフトバンクや伊藤忠商事などが出資するなど、日本企業も乗り遅れまいと必死だ。

 核融合は「核」という言葉からマイナスイメージを持たれがちだが、燃料は水素で、ウランやプルトニウムといった高レベル放射性物質を使う原発に比べて安全で、リスクは原発の1000分の1とも言われる。ただ、「地上の太陽」とのキャッチフレーズで1950年代から研究されているものの、いまだ実現に至っていない。ところが、ここに来てのAI開発競争で、急速に実用化への期待が高まっているのだ。となると黙ってはいないのが、やはり中国だ。

「核融合発電の実現は、人類全体の夢ということで、日米欧に中国・ロシアも加えた世界7カ国・地域が共同で開発を進める国際熱核融合実験炉(ITER)を南フランスで準備中ですが、25年稼働開始としていたものを昨年、34年に遅らせたところです。ところが中国は独自で開発を進めていて、ITERと同じような実験炉を27年に稼働させるとしています」(同)

 つまり、ここでも「オープンAI対ディープシーク」と同じ戦いが繰り広げられているわけだが、果たして軍配はどちらに。

(猫間滋)

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