もちろん、元木コーチだけを特別扱いしているわけではない。他の未経験指導者である宮本コーチや後藤コーチ、鈴木コーチにも原監督は「膝をつき合わせるスタイル」で今も「育成」し続けている。
「今季の原監督は『全権監督』という肩書ばかりがクローズアップされがちだけど、必ずしも何から何まで1人で動いているわけではない。実は各コーチに対して『最後のジャッジは私が行うが、いくつかのプランを熟考して提案してほしい。“A、B、C、Dのプランのうち、どれにしますか?”と私に問いただすのが、キミたちの仕事だ』と口を酸っぱくして言っている。そうすることで各コーチは常に考えることを意識するようになるし、監督とコーチが意見を交わす機会も必然的に増えるので、スタッフの連携も密になる。コーチ経験者の水野コーチや吉村コーチも、あらためて『原流マネジメント』の奥深さを感じ取っているようだ」(球団関係者)
とはいえ、長いペナントレースの期間中は必ずしも順風満帆とはいかない。
今季の巨人も球宴明けの7月中旬から一時、急失速。独走にかげりが見え始め、その一因として、若き主砲の岡本和真(23)がブレーキになるケースが目立っていた。そこで、原監督はかつてチームメイトとして苦楽を共にした「G史上最強助っ人」ことウォーレン・クロマティ氏(65)を8月上旬に臨時コーチとして招聘。チーム帯同は1週間にも満たない超短期間だったが、身ぶり手ぶりのオーバーアクションを交えたクロマティ氏のメジャー流指導術の効果によって、岡本は完全復活。直接指導を受けて以降となる8月22日までの15試合で、6本塁打をぶっ放している。スポーツ紙巨人番記者が解説する。
「クロマティ氏は岡本の腰を『ヘ〜イ!』と言いながらポンと叩いたり、ジョークも飛ばしたりして明るいムードを漂わせながら指導していました。その時点で負けが込んできたことで誰もが暗くなりかけていたので、原監督はクロマティ氏にチーム内の嫌な空気も入れ替えてもらおうと考えていたのです。岡本もどうしていいのかわからず迷走していましたが、陽気なアメリカンスタイルのクロマティ氏と触れ合うことで『野球は楽しまなければいけない』という原点に立ち返り、開き直った結果がいい方向へとつながった。岡本も『クロウさん、おもしろいッス』と大笑いしながら練習を楽しんでいましたからね。そして何より、こうしたクロマティ氏の別スタイルの指導法を間近で見ることが、今のコーチ陣たちにとっても大きな勉強となったのは言うまでもありません。クロマティ氏を招聘した原監督の狙いが、まさに的中したということでしょう」