「ドーピング疑惑」ロシアフィギュア・ワリエワが聴聞会当日に投稿した「復讐ソング」の深い意味

 1年9カ月という時を経て、いよいよ、あの問題に決着がつくのか。

 2022年2月、北京五輪フィギュアスケート団体戦に出場し、女子ショート・フリーで驚くべき得点を叩き出してロシア・オリンピック委員会(ROC)の金メダル獲得に貢献した、ロシアスケート界の新星、カミラ・ワリエワ。

 しかし、2021年12月25日に行われたロシア選手権の際、採取された検体から禁止薬物のトリメタジジンの陽性反応が出たことで、22年2月、世界反ドーピング機関(WADA)や国際スケート連盟(ISU)が、金メダルはく奪や、資格停止処分を求める騒動に発展したことは記憶に新しい。一方、ロシア反ドーピング機関(RUSAD)は「過失なし」と真っ向から反論し、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が非公式に審理を行っていた。

「9月26日に行われた審理の際、ワリエワの弁護側は、彼女の体内から禁止薬物が検出された理由について、彼女には心臓疾患の治療を受けている祖父がおり、問題の薬物は祖父が服用したもので、クリスマスに同じグラスを使用したことが要因になった可能性があると、CASの仲裁人に主張しています。ただ、関係者の証言などが精査できなかったこともあり、CASは『追加の資料提出が必要』と判断。11月9日、10日にスイス・ローザンヌであらためて聴聞会を再開することになり、世界のスポーツ関係者やスケートファンが注目していたのです」(スポーツライター)

 非公式な審議とあって、現段階では、9日、10日の両日に、果たしてどのような審議が行われ、CASからいつ、どんな審判が下されるのかは不明だが、仮に金メダルはく奪や、資格停止処分となれば、ROCはもとより本人にとっても、今後のスケート人生において大きな汚点となるだろう。

 そんなワリエワは、CASによる聴聞会当日の9日、ロシアのチャットツール「テレグラム」に練習の動画を投稿した。だが、その映像のバックに流されたのが極めて意味深な音楽だったことから、大きな話題となった。

 その音楽とは、復讐と恨みをテーマにしたロシア人ラッパー「L’One」の「At the Very Beginning」だったのだ。音楽ライターが説明する。

「L’Oneは、本名レヴァン・ゴロジアという、グルジア系ロシア人のラッパーで、とにかく彼が描く歌詞は攻撃的で過激。この『At the Very Beginning』という曲も、《頭の中は復讐の考えだけ。誰に対しても、たとえ最も親しい人に対しても憤りを感じる。残されたのはオリンピックの廃墟だけ。口から泡を吹きながら、必死で真実を証明する》という、いわば『超過激な復讐ソング』なのです」

 彼女がなぜ自身の練習映像にかぶせる形でこの曲を流したのかは不明だが、近日中には審議会の結果が明らかになるといわれる中、わずか17歳のワエリアの心が激しく揺れ動いているだろうことは容易に想像がつくのだ。

(灯倫太郎)

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