「闇の武器商人」北朝鮮が“2つの戦争”で想定外の特需に

 今年7月に韓国銀行(中央銀行)が発表した北朝鮮の2022年における実質国内総生産(GDP)は、前年より0.2%減で3年連続のマイナス成長を記録。さらに国民総所得(GNI)は36兆7000億ウォン(約3兆9700億円)と、韓国のほぼ60分の1の水準だったことがわかった。

 資金難で、海外の大使館などの相次ぐ閉鎖を公表している北朝鮮。しかし一方では、ロシアとウクライナによる戦争、並びに先月勃発したイスラエルとハマスの紛争で、想定外の特需に沸いているという。

 軍事アナリストが解説する。

「韓国国家情報院の分析によれば、北朝鮮がすでにロシアへ搬出したと思われる砲弾は約100万発。ただ、この程度なら戦場では2カ月ほどで使い切ってしまいます。これまで、北朝鮮が軍事工場で平時に生産できる砲弾量は年間200万発ほどとされてきましたが、言うまでもなく北朝鮮は金正恩総書記のトップダウンですべてが決まる兵営国家体制。おそらくは鶴の一声で、人間を総動員して工場をフル稼働させるはず。そうなれば、平時の何倍もの生産が可能でしょう。さらに北朝鮮は、パレスチナの武装組織ハマスをはじめ中東の親イラン武装勢力とも太い武器コネクションを持っており、ハマスの幹部がレバノンメディアの取材に答えて『北朝鮮が(イスラエルとの戦争に)介入する日が来るかもしれない。同盟の一部であるため』とハッキリ明言していますからね。北朝鮮が、この2つの戦争を最大のチャンスと捉え、武器取引構想をさらに本格化していくことは間違いないでしょう」

 韓国軍によれば、8月から今月初めまでの間に北朝鮮が羅津港から、ロシアに送ったコンテナが約2000個。仮にその中に122ミリ放射砲弾が積載されていたとすれば、その数は20万発以上。152ミリ砲弾なら100万発以上になる、と分析している。

「北朝鮮の武器開発及び生産などすべての軍需産業を束ねるのが、第2経済委員会という部署です。武器弾薬の開発・生産・分配はすべてここでコントロールされ、160カ所以上ある軍需工場を動かしているといわれています。そこで得た資金を、金総書記の悲願である軍事偵察衛星や核ミサイル開発に湯水のように投入するというわけです」(同)

 国際社会から制裁を受ける中、ロシアとハマスへの支援を活発化する北朝鮮。飢えに苦しむ国民の生活がこれ以上、深刻化しないよう願うばかりだ。

(灯倫太郎)

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