佐藤治彦「儲かるマネー駆け込み寺」低金利時代はもうすぐ終わる 家族と家を守る対策を!

 住宅ローンを抱えた人に危機が迫っている。かつて住宅ローンといえば、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)のフラット35といった長期の固定金利で借りるのが一般的だった。それが20年ほど前から変動金利で借りる人が増え、今では当たり前になっている。

 というのも、現在の変動金利は年率0.3%といった非常に低いものが多く、それがもう20年以上も続いている。特にアベノミクスが始まり、前の日銀総裁の黒田氏が導入したマイナス金利政策以降は、異様な低金利が続いてきた。

 住宅を初めて購入するのは30代のなかばで、結婚して家族を持つ頃に住宅ローンを組む人が多い。だから今の40代なかばくらいまでに住宅を買った人の多くは、変動金利の住宅ローンを返している。変動金利といっても金利自体が上がったことがないので、それが当然と思っているはずだ。

 固定金利の代表格、フラット35は融資率90%以下の場合で年1.88%が現在の金利だ。この金利も非常に低いが、変動金利の年0.3%と比べると6倍以上になる。ざっくりした計算だが、ローン残高が4000万円あれば、変動金利の年0.3%なら1年で12万円。1.88%なら75万2000円を利息分として毎年払うことになる。

 多くの人の住宅ローンの年間返済額は130万円程度と言われているから、それに従うと変動金利なら元本を毎年118万円返せるが、固定金利では約55万円しか返せない計算になる。

 しかし、変動金利が0.3%といった超低金利時代は間もなく終わりを告げるだろう。というのも、今や金融関係者の関心事は、日本銀行が物価高対策もあり、いつアベノミクス時代の今の異様な超低金利政策を終わらせるかに注目しているからだ。

 他のG7各国がインフレ対策のため金利を幾度も上げているのに、日本は大規模な金融緩和政策のまま。そのためアメリカやEUなどと金利差が広がり、急激な円安が進んでガソリンや灯油、食料品に至るまでモノの値段が上がった。

 インフレ率は3%程度というが、生鮮食料品を除いた食料品は9%以上も上がっている。植田日銀総裁は超低金利政策を維持する理由として、賃金の持続的な上昇が確認できていないからとしている。

 そのため、来年の春闘などで今年並みの賃金上昇があれば、いよいよ日銀は過去30年近く続けてきた金融緩和政策の方向転換をするのではないかと予測する専門家が多い。

 中央銀行の金利は0.25%単位で変更されることが多いから、日銀が0.25%とか0.5%金利を上げることは容易に予測される。となると、理論的には住宅ローンの変動金利は今の0.3%程度から、一気に2倍以上の0・6%を超えることも予想される。

 欧米各国では1年で変動金利が4%前後も上がったケースがあり、住宅ローンを返せなくなって家を手放し、借金だけが残ったというケースも少なくない。

 金利がどんなペースで上がっていくかにもよるのだが、欧米のようなペースで金利が上がるのならば、変動金利の住宅ローンから、金利が低いうちに固定金利に乗り換える人が殺到するだろう。

 しかし、それは住宅ローンの返済の多くは利息に消えていき、元本が減らないことになる。そういう背景もあるのだろう。フラット50という固定金利の住宅ローンが注目されている。

 最長80歳まで、50年の住宅ローンだ。元本がなかなか減らないのなら、35年でなく40年、45年と長いことローンを返済し続ける必要があるからだ。

 このフラット50の金利も日銀が金利を上げ始めれば徐々に上がっていく。今、住宅ローンを抱える若い人たちに申し上げたい。超低金利時代がもうすぐ終わることを覚悟して対策を立ててほしい。家族とマイホームを守るために。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。

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