この30年間、平均年収がほぼ横ばいの日本に対し、海外のほとんどの国は右肩上がり。さらに現在は円安の影響もあり、賃金格差は開く一方だ。そのため、「日本で会社勤めをするよりワーキングホリデーのほうが稼げる」と海外バイトに励む若者も少なくない。
これは中高年にも同じことが言える。「今年に入って『ゲンサイ』と呼ばれる現地採用で海外転職する人が急増している」と語るのは転職コンサルタント。海外にある企業(現地の日系企業も含む)と雇用契約を結ぶ働き方だ。これまで培ったスキルを海外で活かすことができるというわけだが、特に彼らの間で人気があるのは東南アジアだという。だが、すでに欧米の先進国並みの賃金水準を誇るシンガポールを除けば、まだ平均年収は上回っているはず。どういうことなのか?
「例えば、海外で日本人向けの求人がもっとも多いタイでは最低月収5万バーツ(約20万6000円)とタイ人の約1.8倍。しかも、40代以上はマネージャー以上の役職での採用が一般的で、給料の相場は8万〜10万バーツ(33万円〜41万2000円)と一気にはね上がります。マレーシアでも外国人従業員の最低月収は8000リンギット(約25万3000円)と現地の人のおよそ1.5倍で、同じく40代管理職クラスならさらに増えます」(前出・コンサルタント)
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、45〜49歳の男性の平均年収は388万円、50〜54歳は410万円のため、日本よりも稼げるということになる。
「欧米圏なら年収2000万円台の求人も多いですが、高い語学力や専門スキルが求められ、採用を勝ち取るのは大変です。それに比べるとシンガポール以外の東南アジアは難易度的に高くはない。工場勤務などのエンジニア系はマネージャークラスでもそこまで高い語学力は要求されません。それにコロナ禍で多くの外国人が辞めてしまったことで人材不足が起きており、積極的に採用を行っていることも追い風になっています」(同)
東南アジアも物価が年々上昇しているとはいえ、日本よりはまだ安い。いざ働くとなれば単身赴任を強いられる可能性は高いが、収入を増やしたい中小企業のサラリーマンにとっては検討する価値はありそうだ。