阿部巨人のコーチ人事が発表された。その翌10月17日のことだ。この日、いちばんの人気者は桑田真澄2軍監督。2軍監督からヘッド兼打撃チーフコーチに昇格した二岡智宏コーチと入れ替わってフェニックスリーグの指揮を執るためで、この日は終始メディアに囲まれていた。
「練習は量よりも質。日本は根性論。それをスポーツ医科学を使って改善していきたいと思っています。こんな素晴らしいものができるのに」
そう言って桑田2軍監督が見上げたのは、ジャイアンツ球場の三塁側にできる新・選手寮。チーム関係者によれば、この中にラボ(研究室)が設けられるとのこと。トラックマンなどの測定器で集めたデータを管理し、育成にも活用していくという。
「量よりも質」は桑田2軍監督らしい言葉だが、打撃担当から外野守備走塁コーチに配置換えとなった亀井善行コーチはこんなことを言っていた。
「守備、走塁は安定感。とにかく数をこなさないと。平均以上を求めたい」
これは同日で秋季練習第1クールが終了となるので、「ここまでの総括」として出たもの。今季のチーム全体の盗塁数は48。リーグトップの阪神は79だから、かなり少ない。得点力アップのためには、やはり単独スチールを増やしていかなければならない。
「巨人の選手は『走りたくても走れない』というんです。相手投手のクセを読みきれていないせいもあるんですが、スタートダッシュを切る実戦経験が少なくなり、思い切りが悪くなってしまい…」(スポーツ紙記者)
亀井コーチの言う「数をこなす」は経験値。だが、桑田2軍監督の「量よりも質」と矛盾する気がしないでもない。そもそも、巨人の2軍球場には桑田コーチが現役時代に走りに走りこんでできた“桑田ロード”がある。ランニングの「量」が半端なく多かったため、その部分の芝生がはげてしまったのだ。桑田2軍監督も「量」で這い上がった1人なのである。
選手を潰すような根性論をなくしたいとする桑田2軍監督の意見に反対する者はいない。しかし、「量よりも質」の真意をしっかり説明しないと、勘違いしてしまう若手も出てくるだろう。
桑田2軍監督の初采配は、19日のオリックス戦。どんな采配を振るのか気になるばかりだ。
(飯山満/スポーツライター)