今月12日、ロシアのプーチン大統領との首脳会談に臨んだ、北朝鮮の金正恩総書記。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は22日の社説で、その目的の一つが、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対する激励だったとして、「反帝国主義の正義の闘いを力強く鼓舞し推し進めた」「北朝鮮の国際的地位と影響力が世界に改めて示された」と、相変わらず強気の姿勢を見せた。
一方、中国は正恩氏のロシア訪問について、13日の中国外交部定例会見で毛寧報道官が、「それは朝鮮とロシアの(外交)日程のことで、朝ロ関係に関わることだ」とコメントして以降、公式な見解は発しておらず、表向きには無関心な態度を装っている。しかし、その内実はかなりイラついているようにも見える。
「というのも、これまでの中朝関係であれば、正恩氏が外国首脳と会談すれば側近が北京に報告しにいくというのが恒例だったはず。しかし、今回に限ってはそれがなかったようです。その証拠に、目的は10月に北京で開かれる『一帯一路フォーラム』への大統領招待とはいえ、今回は王毅外相がわざわざモスクワまで出向いて話を聞いていますからね。おそらくは、正恩氏が習主席に何らかのプレッシャーをかけたということなのでしょうが、その辺りにも正恩氏のしたたかな外交手腕が見てとれます」(北朝鮮ウォッチャー)
とはいえ中国としても、露朝の急接近はある意味、渡りに船だったのではないかという見方もある。その最大の理由が中国と北朝鮮との間にある「軍事同盟」だというのだ。
「北朝鮮は崩壊前のソ連と軍事同盟を結んでいましたが、崩壊後は友好善隣協力条約となり、軍事的な結びつきはなくなりました。一方、中国は朝鮮と軍事同盟を結んでいるため、仮に北朝鮮が西側との間で軍事衝突でも起こした場合、加勢しなければなりません。つまり、尻ぬぐいをしなければならないんです。しかし露朝が蜜月になれば、軍事同盟とまではいかないまでもロシアが軍事的後ろ盾になる。中国だけでなくロシアが背後にいるとなれば、日米韓としてもそう簡単に北朝鮮に手出しすることが出来なくなります。これは、北朝鮮にとっても中国にとっても大きなメリットとなります」(同)
複雑に絡み合う、ロシア、北朝鮮、中国の思惑。3国の行方に世界が注目している。
(灯倫太郎)