福島第一原発処理水の海洋放出に対し強く反発し、日本からの海産物の輸入禁止措置に踏み切った中国政府。同国メディアが日本を徹底的に糾弾する報道を繰り返したため、それに感化された中国人たちによる役所や企業、個人への抗議という名の迷惑電話が数多く報告されている。
だが、旅行で日本を訪れた中国人たちはこの処理水問題をどう思っているのか? 広州から家族で来日した30代の男性は、食品関連の会社に勤めていることを明かしたうえで、
「日本の食の安全基準は世界でも特に厳しい。健康被害を及ぼすレベルなら国内で規制しているはずだし、それがないのは安全だということ」
と、まったく気にする様子はない。
実際、新宿や渋谷など都心の回転寿司店は今も多くの中国人客で賑わっており、友人と旅行中だという深セン在住の20代女性に聞くと、「目的のひとつは日本のお寿司」と話す。
「少なくとも中国産の食材よりは安全(笑)。実際、どのネタも中国で食べたお寿司より鮮度もよかった」
中には、処理水への不安を理由に「海産物は食べない」と答えた中国人旅行者もいたが、そのうちの1人の上海から来た30代女性は、「同じ中国人でも気にせず食べている人は多いし、実は大丈夫なのかな…」と揺れる心の内を明かす。
「中国国内に留まる人に比べると、訪日中国人は海洋放出に対する反動について懐疑的な見方をしている人が多いようです。彼らは旅行などを理由に積極的に海外の情報を集め、来日後も日本国内の様子などを自分の目で確かめて安全だと判断しているのでしょう。そもそも中国は、処理水が具体的にどう危険なのかに触れておらず、科学的根拠のないイメージ報道による情報操作ですから」(大手紙記者)
今回の処理水放出による海産物輸入禁止が「政治問題」であることは、訪日中国人たちも薄々気づいているようだ。