マイナンバーカード「持っているだけでこんなに危ない」(2)カード返却前にやっておこう

 不安の種は健康保険証との紐づけに限らない。最新刊「堤未果のショック・ドクトリン」(幻冬舎新書)が話題の国際ジャーナリスト・堤未果氏はこう語る。

「身分証明書がマイナンバーカード一本になれば、銀行口座だけでなく、不動産や株式など、すべての取引が政府に筒抜けになっていきます。脱税対策と言いますが、数十億円の脱税防止に1兆円もの事業費を投入するのは意味不明、誰が見ても『利権予算』です」

 政府は最大2万円分のマイナポイントをエサに、カードの普及や銀行口座の紐づけを推進してきたが、未来には大きな落とし穴が。

「財務省としては税収を増やすことが最重要課題。とはいえ、消費税率を上げれば国民は怒り、政権支持率は間違いなく下がります。そこで、戦後の日本で行われたような財産税の徴収がヒントに。ウクライナ復興支援、新型コロナ対策、少子化対策にSDGs‥‥。『国費がないのでご負担を』と、保有資産の何%かを有無を言わせず財産税として徴収することも可能になる。『え?財産権は?』と異を唱えても緊急事態下ならそんなもの吹っ飛びます。これがショック・ドクトリン。国民を思考停止に陥れて、どさくさ紛れに強欲的政策を導入する火事場泥棒的な政治手法。特に憲法改正案の『緊急事態条項』は要注意ですよ」(堤氏)

 1946年に政府が財産税を課した際には、最大90%もの高い税率で国民の資産が〝没収〟された。

「税の徴収だけではありません。蛇口を開け閉めするように、ベーシックインカムや還付金という形で国民へのデジタル支払いが常態化すれば、カナダのトルドー首相のように緊急事態法を発動させて、反政府デモ参加者の口座凍結も可能に。マイナンバーカードに紐づけされたキャッシュレス決済で買い物や交通支払いをすれば、政府に行動をすべて把握されてしまう」(堤氏)

 国民生活が丸裸にされようとしている。加えて懸念されるのが、自衛隊の隊員不足を補う「デジタル徴兵」だ。

「これまで自衛隊は各市町村の住民基本台帳を閲覧し、そこから18歳の適齢者の個人情報を抜き出して勧誘に活用してきました。もしも、個人情報がマイナンバーカードに一元化されれば、住所、氏名はおろか、正社員か否か、収入面まで筒抜けになり、入隊勧誘のメールをスマホに直接送ることが可能になります。問題は両親や教師の目の届かないところで、自衛隊と学生が直接結びついてしまう点。『お給料はいいですよ』などと、ピンポイントで若者を勧誘してくるでしょう。ロシアでは『デジタル赤紙』を導入してメール1本で徴兵をかけていますが、他人事では片づけられません」(堤氏)

 持っているだけで財産を奪われ、自衛隊にスカウトされるとは‥‥。そんな危険な代物にもかかわらず、マイナンバーカードの交付率は5月末時点で69.8%。申請受付数は累計で9700万以上に及んでいる。

「不安なら役所ですぐに返却できます。その際は、一度マイナポータルにログインして、登録情報や履歴をすべて削除すること。これを忘れると、カードはないのに紐づけされた口座データだけが残ってしまうので気をつけて。また、確定申告の際に『公金受け取り口座』のチェックを外さないと、自動的に口座と紐づけられてしまいます。『個人データの死守』はデジタル時代の鉄則。大事な情報は安易に出さずに自己防衛しましょう」(堤氏)

 なお、24年秋に紙の保険証は廃止されるが、「医療保険加入の資格確認書」を役所などで作成すれば、保険証の代わりとなる。焦りは禁物。アナログに立ち戻る冷静さと勇気を持つべきかもしれない。

*週刊アサヒ芸能7月6日号掲載

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