「コロナ対応並みの臨戦態勢で、国民のマイナンバー制度に対する信頼を1日も早く回復すべく全力を尽くしてほしい」
6月21日、岸田文雄総理(65)は新設された「情報総点検本部」でハッパをかけた。だが、もはや不具合だけでは到底済まされない。
「冗談じゃないですよ」
経済ジャーナリストの荻原博子氏は開口一番、紙保険証の廃止に異を唱える。
「従来の国民健康保険証は2年ごとの更新で、何もしなくても郵送してくれましたけど、マイナカードに書き込まれた電子証明書の有効期限は5年。そのたびにわざわざ役所の窓口で更新の手続きをしなくてはいけなくなってしまう。一人暮らしで体の悪い高齢者や施設に入居している方たちはもっと大変ですよ」
政府が「簡単」「便利」と普及を進めてきたマイナ保険証には大きなリスクがつきまとう。荻原氏が続ける。
「現行のシステムではマイナンバーカードと暗証番号があれば誰でもマイナポータルにログインして、年金から収入、口座情報まで閲覧できてしまう。高齢者向けの介護施設では入居者がいつ病院にかかってもいいように、職員が全員分のマイナンバーカードと暗証番号を保管・管理することになる。その場合、薬を取りにいくにしても、全員分の番号を記憶できますか? それともマイナンバーカードに暗証番号を書いた付箋でもつけますか? それを落としでもしたら個人情報がダダ漏れです」
マイナンバーカードの紛失はまさに死活問題だ。
「再発行するにしても、1カ月とか2カ月かかるって言うんですから、そんなに長い間、無保険で過ごすのも心配ですよ」(荻原氏)
実際、マイナ保険証の利用者が「無保険」となるトラブルが多発。システムの不具合により医療費全額を請求されたケースは、1000件以上に上る。
「岸田総理はマイナカードの提示を条件に、『3割負担でいい』と医療機関で柔軟に対応するよう求めていましたが、その患者がもしも無保険だったら、残りの7割を誰が負担するのか。未収金のリスクを医療機関に負わせたら、赤字どころでは済みません。病院がバンバン潰れていきますよ」(荻原氏)
世界最高水準と謳われた日本の医療保険制度が、今や瓦解しようとしている。
(つづく)