出る杭は打たれるとはよく言うが、いよいよこの男の暗殺説まで浮上してきた。
先月25日に公開した動画の中で、ワグネルが掌握したバフムト市街地からの撤退を明らかにしたワグネルの創設者、エフゲニー・プリゴジン氏。しかしその後も、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長を口汚く罵るなど、ロシア軍部や政府との関係が険悪な状態にあることは、すでに報道されている通りだ。
ところが、メディアが連日同氏の言動を取り上げたことで、ロシア国内ではいまプリゴジン人気が爆上がりし、インターネットでの検索回数はプーチン大統領の2倍を超えた、とロシアの独立系メディア「Verstka」が報じた。
「Verstkaの調査によれば、5月以降、プリゴジン氏の発言が過激になってから、グーグルで『プリゴジン』の検索回数が急増。月末時点で『プーチン』を追い抜き、5月28日から6月3日にかけては、グーグルトレンドで『プリゴジン』の人気度が最高の100ポイントに達したのに対し、一方『プーチン』はわずか28ポイントだったことから、もはや両者の人気が完全に逆転したようだ、と伝えています」(ロシア事情に詳しいジャーナリスト)
ところが、かねてから軍のトップを痛烈に批判し、さらには「クソバカなじいさん」と、プーチン氏を連想させるような発言を繰り返す同氏に対し、軍関係者の中には怒りを通り越し殺意を口にする者も少なくない、との報道もある。
「米ニューズウイークの取材に対し、旧ソ連が専門である英オックスフォード大学のブラド・ミフネンコ教授は、『彼の命は近いうちに、何者かの手によって突然終わりを迎えさせられることになるだろう』として、『プリゴジンがロシア国家の偽装により、手に拳銃を持ち馬鹿げた遺書を遺して“自殺”遺体で発見される方に賭ける』と物騒な発言をしています。当然ロシア軍は、プリゴジン氏の居場所を把握しているでしょうから、やる気になればそれも不可能ではない。軍上層部にとって、今やワグネルは目の上のタンコブですからね。そう考えるとミフネンコ教授の言葉も、あながち絵空事とも言い切れません」(同)
13日の英スカイニュースの報道によれば、プリゴジン氏は「今後ウクライナで活動できるか確信できない」と話したというが、一方CNNは15日、ロシアのウリヤノフスク州に滞在中の同氏が「6月5日に戦線を離れたが、ワグネルの戦闘員は8月5日に戦線に戻り、完全な戦闘態勢で設定された任務を遂行する」と、ジャーナリストに対しコメントしたことを伝えている。はたして、この真逆とも思える発言の裏には、どんな思惑が隠されているのか。
「結局は、ワグネルは民間軍事会社だということです。つまり、金さえ積まれればどちらへも転ぶだろうし、寝返ることも不思議ではない。さらに、4月にはスーダン国軍と同国の準軍事組織RSFの衝突に参戦、RSFとの関係強化を図りましたが、背景にはRSFが年間90トンという世界10位の金採掘利権を握っているという事実があるからです。ワグネルはRSFと契約し、武器供与や軍事訓練などの見返りに金の精製に関わる利権を得ている。なので、ウクライナ戦争よりそちらが儲かるのであれば、スーダンやさらにアフリカ諸国へ手を広げる可能性もあるでしょう」(同)
まさに、昨日の敵は今日の友、そして地獄の沙汰も金次第…。
(灯倫太郎)
*画像はワグネルのSNSより