サンマ、ホッケが消え、サケは高騰して“赤いダイヤ”に! 日本の「水産事情」がヤバすぎる  

 政府は6月2日に22年度の「水産白書」を閣議決定し、6日には一般向けにも公開された。昨今は経済安全保障で、地政学的リスクの影響をなるべく被らないサプライチェーンの確立が謳われているが、それは水産の分野でも全く同じ。いや、むしろこの分野ではかなり深刻な事態にさらされていて、そのことを反映する中身となっている。

「今回の白書で、始めてロシアのウクライナ侵攻の件が取り上げられました。さらに22年度は進行していた円安も加わったことで、水産物の輸入量は21年度に比べてほぼ横ばいにもかかわらず、輸入額はなんと28.6%も上昇しているので、つまりは輸入品は3割も値上がりしたということになります。しかもその金額は約2兆700億円で、60年に調査を開始して以来、過去最高。一般の消費者動向を見ても、物価指数は14%上昇した一方、年間消費量は14%減と、水産物が高くなったために買い控えている状況が見て取れます」(経済ジャーナリスト)

 ロシアに対しては経済制裁で、カニ、サケ・マス、イクラ等の冷凍魚卵、タラ、ニシンとその卵で優遇税率を撤廃。輸入の3割はズワイやタラバのカニが占めるが、前年比で27.9%も金額が増えている。

 白書で「買い負け」という言葉が登場して話題になったのが、03年の頃。買い負けとは、ヘルシーな和食ブームで中国、タイ、インドネシアといった経済成長著しいアジアの周辺国からの魚介類の需要が高まったために、国際相場で日本企業が購買力でこれらの国に勝てず、買われるに任せている状態のこと。つまり、もはや日本は外国産の水産物に手を出せなくなっているということだ。

「では国内の漁獲量はどうかと言えば、とくにホッケ、スルメイカ、サケ、サンマなどはここ数十年の間で半分以下まで減少しているのが実情です。ところが少なくなった分を海外から買うことが出来ない。となると当然、食卓からこれらの品目は遠ざかることになります」(同)

 確かにサンマは毎年「高い、高い」と言われるのが、もはや年中行事のようになっている。サケは寿司のサーモンが世界的なブームになっていて、サケ・マス養殖が活発なノルウェー、チリ、イギリス、カナダのうち、日本はノルウェーからの輸入に大きく依存していたものが22年度はガクンと減少。将来的には「赤いダイヤ」と呼ばれるようになるとも言われ、庶民にとっては手の届かない高嶺の花になるかもしれない。

 日本はどこでも美味い魚が食べられる国だったが、それももはや過去のものとなりつつあるようだ。

(猫間滋)

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