ロシア国防相は4月14日、ロシアの太平洋艦隊が日本海で軍事演習を行って、潜水艦2隻が巡航ミサイルを発射。日本海上の標的に全て命中したなどと“わざわざ”発表した。まるで北朝鮮のような振る舞いを彷彿させる「威嚇」だ。日本はロシアに対しEUやG7並みの経済制裁を行っているので、海を挟んだ国境で牽制し合っているわけだが、そうした睨み合いに付き合わされているのが日本の漁業関係者だ。
「例年なら4月10日は日本の200カイリ内でのサケ・マス漁が解禁される日で、北海道の漁業関係者は意気揚々と漁に出かける日です。ところが今年は自宅待機を強いられました。というのも、その前に必要な日ロ間での漁業交渉がロシアのウクライナ侵攻で棚上げにされていて、ようやく11日から始まったところだったからです」(全国紙記者)
日本の200カイリ内での漁なので交渉は必要ないかのように思えるが、実は魚を獲るにはその魚が生まれた川のある国に管轄権がある「母川国主義」というものがある。そこで日本に回遊してくるサケ類の9割はロシアの川で生まれたものなので、ロシアに漁業協力金を支払う必要がある。そのための交渉なのだが、やっと両者がテーブルに着いたところなのだ。
もちろん現在の情勢に鑑みれば、ロシア側が交渉で難癖をつけてくる可能性も考えられる。一方で、漁業は小麦や天然資源などと並んでロシアの外貨獲得の有効な手立てなので、侵攻の影響は及ばないだろうとの楽観論もある。ただ交渉がいつ終わるかは未定で、結局、漁業関係者は食いっぱぐれるばかり。北洋海産物の価格に跳ね返って、一般消費者が割りを食う公算も大きい。
サケ・マスだけではない。このところ不漁続きのサンマ漁にも悪影響が。
「14日に全国さんま棒受網漁業協同組合が公表したところでは、5〜7月に北太平洋の公海にサンマ漁に乗り出す船はないそうです。いわゆる初夏のサンマ漁ですが、近年の不漁で採算が見込めないことから2年連続で出漁する船がなかったところに、今年はウクライナ問題がさらに加わりました。というのも、ヘタをしたらロシアによって拿捕(だほ)される可能性があるからです。金にならない上に身の上の危機まであるというのであれば、わざわざ漁に出る船がないのも当然でしょう」(同)
今年はロシアのウクライナ侵攻が、輪をかけてたサンマの値段を上げるなんてことになるかもしれない。
(猫間滋)