ドローン攻撃と武装集団の蜂起で国内が戦場化!プーチン大統領を「6月危機」が襲う

 プーチン大統領の最側近として知られる、チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長が、「チェチェン部隊が兵力再配備命令を受けた。責任地域はドネツィク(ドネツク)共和国」とSNSに投稿した。撤退するロシアの民間軍事会社「ワグネル」の兵士に代わり、自身の兵力を最前線に投入するという。

 カディロフ氏率いるチェチェン部隊は、形の上ではロシア安全保障機構の一部という位置づけだが、実態はカディロフ氏をカリスマ的存在とした、残忍さで悪名高い大規模な準軍事組織と言われる。

 プーチン氏がチェチェン部隊を投入した背景には、むろん、プリゴジン氏率いるワグネルの戦線離脱があるが、加えて、首都モスクワを襲ったドローン攻撃や、反プーチンを掲げるロシア人武装組織の台頭が影響していると見られる。

「ロシア政府は大統領公邸近くにも侵入したドローンについて、ウクライナの攻撃としています。が、一方で、クレムリン上空の『防空』が脆弱であることが判明してしまいました。また、5月22日には、ウクライナとの国境にあるベルゴロド州に『自由ロシア軍』と『ロシア義勇軍』を名乗る2つの武装集団が『侵攻』しています。彼らは、国境の検問所を突破し、国境付近の2つの村を占拠。政府は正規軍を投入して、翌日、村は解放されましたが、武装集団はSNSに、《私たちの最終目標はクレムリンの赤の広場だ。人々よ、勇気を出せ。我々は母国に戻る。ロシアは自由となる》との声明を発表しています。国境警備隊が守る検問所が突破され、一時的とはいえ村が占拠されたことにロシア政府は大きな衝撃を受けています」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)

 こうしたドローン攻撃や武装集団による国境突破は、「国内は戦場にならない」というロシア国民の幻想を完全に打ち砕くものだった。そして、「プーチン体制での安定は失いたくない」という国民の支持の上に成り立っているプーチン政権の土台を根本から揺るがす大事件だったという。

 ウクライナの反転攻勢とワグネルの撤退に加え、ドローン攻撃と武装集団の国境突破による「国内の戦場化」。そしてプーチン支持だった国民の不満…。

「さらに、5月30日にはウクライナ国防省情報総局のスキビツキー副局長がドイツの『ベルト』紙の取材に対し、プーチン大統領の『暗殺』に言及しているんです。スキビツキー副局長は『プーチン大統領はウクライナ特殊部隊による《排除を狙う候補者リスト》のトップだ』と語ったんです。一方で、戦争の帰趨によっては強硬派によるクレムリン内でのクーデターも十分に考えらます。こうした内外から何らかの動きが6月中にもある、と見る関係者もいることから、今やプーチン大統領の『6月危機』すら囁かれているんです」(前出・ジャーナリスト)

 四面楚歌に陥った「プーチン大統領の6月」から目が離せないのである。

(灯倫太郎)

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