「ロシア金融制裁」余波で国際通貨に異変!「脱ドル→中国人民元」が急拡大している

 米国史上初のデフォルト(債務不履行)が現実味を増す一方、ウクライナ戦争を契機に「中国人民元」が国際通貨としての存在感を高めている。

 中国人民銀行が、海外投資家に対し、香港市場経由を条件に本土の金融派生商品への投資を解禁したのは4月28日のこと。結果、海外の企業や個人が人民元を所有した場合も、金利スワップ取引などが可能になり、人民元の国際化が大きく前進することになった。

「これまでは、外国人が中国の上場株式や債券を購入する場合、香港市場のストックコネクト制度を利用するか、あるいは当局の許可を得て制限の中で取引を行う、適格機関投資家になる方法しかなく、ドルに比べると、運用面、為替変動リスク両面で、どうしても見劣りする状況でした。しかし、今回の金融派生商品への投資解禁措置で『人民元建て決済』を行う個人や企業が増えることは間違いないでしょう。世界の貿易決済における人民元のシェアは3%程度と、まだまだドルやユーロとは比べ物にならないものの、今後飛躍的に拡大する可能性は十分に考えられまますね」(経済アナリスト)

 さらに、人民元の国際化に一役買っているのが諸外国の対応の変化だという。

「ブラジル政府は3月、中国との貿易について、ドル取引から直接レアルか人民元による取引に変更することを決定。マレーシアも4月、首相が国会で『今後も米ドルに依存し続ける理由はない』として、中国との間で現地通貨のリンギットと人民元による貿易決済の検討を始めました。加えて、アルゼンチンも、中国からの輸入商品の支払いをドル建てから、人民元建て決済で行うと発表。インドネシアやイランなどはすでに人民元を貿易決済通貨として広く使用し始めていますから、今後もドルから人民元へ移行していく国は増えるでしょう」(前出・アナリスト)

 背景には、欧米金融機関の行き過ぎた収益至上主義に対する嫌悪感と、このまま未来永劫、ドル依存することに対する懸念があるようだが、特に非米同盟国がドル依存によるリスクを強く意識したのが、西側諸国によるロシアに対する金融制裁だったと言われる。

「制裁により、ロシアは『国際銀行間通信協会(SWIFT)』から排除され、中国が構築した『人民元国際決済システム(CIPS)』を利用することを余儀なくされました。その結果、ロシア中央銀行によれば、輸入決済における人民元のシェアが前年の4%から23%に急上昇、その比率は今年も上昇し続けていることが明らかになっています。これを知った多くの国が、もうドルだけに依存する必要はないと考えたのです。つまり、ロシアは中国の人民元に助けられた代わりに、その人民元の存在を世界に大きくPRするという役割を担ったことになります」(前出・アナリスト)

 米国に代わり、世界に冠たる覇権国家を目指す中国の習近平国家主席。軍事面だけでなく、経済面でもその強い野望は増すばかりだ。

(灯倫太郎)

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