いよいよ、ウクライナ軍による一大反転攻勢の火ぶたが切って落とされるのか。
先月30日、「重要な戦闘が間もなく始まる」と宣言したゼレンスキー大統領。以来、ウクライナがいつ、どんな形で反転攻勢に出るのかが注目されてきたが、12日には東部ルガンスク州を実効支配するロシア側行政府「ルガンスク人民共和国」が、ウクライナ側からのミサイル攻撃を受け、州都ルガンスク市内の工場2棟が破壊されたと発表した。
「米CNNテレビは米軍高官からの情報として、ウクライナ軍がすでに反転攻勢の準備段階となる『形成作戦』を開始したことを伝えました。これは部隊を前進させる前に、弾薬庫や指揮所などを破壊し、相手の手足を奪ってしまうというもの。攻撃には米国から供与された高機動ロケット砲システム『ハイマース』などが使用され、後は主力戦車がなだれ込むという戦術が予想されます。ウクライナにはすでに、西側最強の主力戦車とされるアメリカの『M1』及び、イギリスの『チャレンジャー2』、そしてドイツの『レオパルト2』の供与が完了しているといいますから、まさにゼレンスキー氏のゴーサイン待ちの状況と思われます」(軍事ジャーナリスト)
そして、今回の一大反転攻勢の最前線に送られるとされるのが、「機械化旅団」と呼ばれる精鋭部隊だ。
「情報源は4月に流出したNATO(北大西洋条約機構)の機密文書。それによれば、今回投入される『機械化旅団』は全部で12個。機械化というのは、戦車や装甲車などを多数配備する部隊という意味で、うち9個は、欧米などで鍛え上げられた腕っこきの兵士たちが在籍しており、世界最多の実戦経験を持つ米陸軍の編成をもとにしているといいますから、攻撃力、スピードともに文字通り米軍並みの実力を持つ精鋭軍団だと考えていいでしょう」(同)
流出した内部文書によれば、今回編成されている機械化旅団は、それぞれ戦力には差があるものの、各旅団が持つ戦車はおおよそ30台前後で、装甲車は最大で100台。兵士の数は全体で約4.5万名。そして、その精鋭の中でも最強とされるのが「第33旅団」という部隊だという。同旅団はドイツのレオパルト2を50台持ち、さらに突撃前に敵を砲撃する米製「M109自走砲」も24台配備。
「加えて第33旅団には、歩兵輸送用に、アフガニスタンでのゲリラ戦用に開発されたタイヤ式装甲車も配備されており、悪路や地雷に対する対応も十分可能です。つまり、33旅団が切り込み隊長として先陣を切り、他の旅団がこれに続いて一気に攻め落とす。おそらくはそんなシナリオが用意されているのではないかと考えられます」(同)
むろん、実践ではセオリー通りにいかないこともが多い戦争だが、はたしてウクライナが仕掛ける「一大反転攻勢作戦」の行方は…。
(灯倫太郎)