「軍に入って!報酬は月35万円〜」ロシアが今さら始めた「兵士募集CM」の深刻ウラ事情

 連日、ロシア軍とウクライナ軍による壮絶な攻防戦が続く、ウクライナ東部の要衝バフムト。一時は、ウクライナの陸軍司令官が「状況は依然厳しいが、バフムトの一部地域からロシア軍が撤退しはじめた」と発表、ロシア軍の劣勢ぶりが伝えられていた。

 その背景にあるのが、バフムトに大量投入されたロシアの民間軍事会社ワグネルの大敗だとされ、米政府高官によれば、昨年12月以降、バフムトでの戦闘におけるロシア軍死者2万人の約半数がワグネル兵士だという。

「ワグネル創設者のプリゴジン氏は、かねてから武器弾薬が届いていないとして、『我々が死ぬ運命なら、ウクライナ軍やNATOによるものではなく、私たちの国の愚かな官僚どものせいだ』と政府や軍部を痛烈に批判していました。プーチン大統領は旧ソ連の対独戦勝記念日までに何としてもバフムトを制圧するよう命じていたようですが、武器弾薬がなければ戦うすべはない。そこでプリゴジン氏は、バフムトの最前線からワグネルを離脱させてロシア軍に引き渡すことを表明したのです」(ロシアウォッチャー)

 ところが、ここにきてプリゴジン氏は「必要なものがすべて配備されることになった」として戦闘の継続を表明。ロシア政府が譲歩した形だが、とはいえ名指しして批判したジョイグ国防相やゲラシモフ軍参謀総長との関係が改善したとは思えない。

 そんな混乱ぶりが伝えられるロシアだが、国内に目を転じると、今さらとも言えるような、「兵士募集CM」が国営テレビから頻繁に流れるようになっているという。さらには、国内のいたるところに「募集ポスター」も張られるようになった。

「CMは、クローゼットの中から軍服を取り出して着用した男性に、電話の向こうから『みんなを集めて。私たちが祖国に必要とされている』との声が届く『奉仕する編』の他、スーパーの警備員やジムのトレーナー、タクシーの運転手らが登場し、彼らが軍服に変身すると、『あなたは本物の男だ。男らしくせよ』という文字が浮かびあがる『自分を試す編』。さらに、ぬかるんだ道を疾走中の軍用車内で、軍服姿の兵士らが『9人まで乗れます!ここは、みんな仲間』というバージョンまで複数あり、最後には『契約して、軍に入って』『月の報酬は20万4000ルーブル(約35万円)から』という文字が映し出されます。背景には、戦況が悪化し、35万円をエサに兵士を急募しなければならないほど兵士が不足しているという状況があると見られています」(前出・ウォッチャー)

 現在、ロシアでは徴兵から逃れるために国外に出国する者が後を絶たず、ロシア大法院の統計によると、昨年、義務徴集忌避容疑で起訴されて有罪判決を受けた男性の数は1121人にのぼるという。同罪で有罪となれば3〜10年の懲役刑になる。

 戦死者急増による兵士不足の一方で兵役を忌避する国民。そんな状況で始まった兵士募集CMに果たしてどれほどの効果があるのか…。

(灯倫太郎)

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