ウクライナ戦に見切り「ワグネル」がスーダン内戦に“鞍替え”の理由

 国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」との戦闘が続く、アフリカのスーダン。4月24日には滞在中だった日本人と、その家族など45人が自衛隊の航空機で近隣のジブチに退避。さらに国際赤十字などの協力で日本人4人がスーダンからジブチとエチオピアに逃れたことが明らかになり、関係者の間に安堵の色が広がった。

 4月に入り首都ハルツームなどで国軍に対する徹底攻撃を行っているRSFだが、実は、その準軍事組織を支援しているのがロシアの「ワグネル・グループ」である可能性が高い、と中東のアルジャジーラ通信社が報道。ほかのメディアも追随し、波紋が広がっている。

 報道によれば、ワグネルは一昨年頃からRSFとのつながりを強めるようになったとされ、その理由はRSF指導者である「ヘメティ」こと、モハメド・ハムダン・ダガロ氏が所有する鉱山に目をつけたプリゴジン氏が接触を図った可能性がある、と指摘している。

「元来、ワグネル・グループは政情不安な途上国に武装勢力を派遣する傭兵組織。そのため、これまでもリビアや中央アフリカ共和国などに兵員を送り込んできました。ここ数年はスーダンでも金鉱の防衛などにあたってきたとされますから、金の採掘や輸出に関わっている可能性もある。つまり、『武器の供与』や『作戦指導』さらに実際の戦闘にも参加しているという報道が事実だとすれば、内戦に乗じて金鉱利権を拡大したいというプリゴジン氏の思惑が透けて見えます」(ロシアウォッチャー)

 一連の報道に対し、プリゴジン氏は声明を発表。「ここ2年以上、ワグネルの戦闘員は1人もスーダンにいない」と、スーダンの内戦との関わりを完全否定しているが、

「ただ、過去にスーダンでワグネルが活動していたことは事実で、その証拠にアメリカとEUは制裁対象に指定しています。実は2017年に、当時スーダン大統領だったオマル・バシル氏がモスクワを訪問した際、ロシア政府との間でかわした協定書の中には、スーダン内にロシアの海軍基地を設置するといった協定のほか、スーダン鉱物省とロシア企業とが協力し金を採掘するといった内容も含まれていたと言われます。おそらくはプーチンの指示によりワグネルがスーダンでの金鉱防衛にあたり、それをロシア企業がバックアップするという形が出来上がっていたのではないか。そこに目をつけたプリゴジン氏が国のためではなく個人的利益のためにRSFと手を組んだ可能性があるということです」(同)

 スーダンでの金の生産量はアフリカで3位。採掘された金は陸路で中央アフリカ共和国に輸送されるが、中央アフリカ共和国にはワグネルの活動拠点があり、ダイヤモンド鉱山の警備に当たっているとされる。

「プリゴジン氏は4月14日、突然『ウクライナ侵攻の作戦を終了すべき』と表明しましたが、最近のプリゴジン氏はロシア当局から囚人の徴兵を禁止され、さらには武器弾薬の供給が減らされるなど、完全にないがしろにされている状態だった。つまり、ウクライナでの戦闘では完全に行き詰まっていた。そこで活動拠点をアフリカに移し、そちらに重点を置くのではないかという見方もあります」(同)

 転んでもタダでは起きないということなのだろうが、ワグネルが全面撤退となればロシア軍の勢力がさらに衰退することは必至。いよいよこの戦争にも終わりが見えてくるのか。

(灯倫太郎)

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