巨人・エース菅野の「ポスティング移籍」(2)山口オーナーに権力が移動

 ただし、順当にいけば、菅野の海外FA権取得は21年シーズンとなる。

 その前年に当たる20年オフにMLB移籍を果たすためには、現実的な手段として「ポスティングシステム」を使うしかない。しかし、巨人は過去一度も、この制度を認めていない。松井秀喜(45)や上原浩治(44)も例外ではなかった。だが、球団内のパワーバランスに変化が生じていることによって、「兆し」が見えだしているというのだ。

 親会社の内情にも詳しい古参の球団関係者は、次のように明かす。

「何よりも巨人でポスティングが認められなかったのは、長きにわたって球団内で強い影響力を持つ読売新聞グループ本社・渡邉恒雄主筆(93)が『NO』と言い続けていたから。その渡邉主筆は昨年、ケガで長期入院するなど体調不良説が飛び交った。現在は職務に復帰しているけど、徐々に第一線から退きつつ、後継者にみずからの権力を渡そうとしている。だからここ最近の渡邉主筆はジャイアンツについてあまり口出しするようなことはしないで、すでに懸案事項に関する最終的なジャッジも球団側に委ねているんだよ」

 渡邉氏から後継者と目され、権力を一手に担いつつある次期最高権力者こそが、読売新聞グループ本社社長と巨人の球団オーナーを兼務する山口寿一氏(62)である。

「山口オーナーは古きよき伝統を守りつつ、時代に見合った経営術も取り入れようとする柔軟な発想力の持ち主です。その山口オーナーのゴーサインで20年のシーズンオフ、菅野に特例でポスティングが認められるだろうと球団内で公然と語られているんだよ」(古参の球団関係者)

 そこには計算も働いている。山口オーナーや巨人幹部が菅野のポスティング移籍を容認できる「大きなメリット」があるからだ。

「球団としてはエースに海外FA権を行使され、1円の金も入ってこずに移籍されてしまうよりは、1年早めて譲渡金を得たほうがよっぽど得策だ。それに加えて、菅野にはかつて日本ハムのドラフト1位指名を拒否し、1年浪人したうえで悲願だった巨人への入団を果たした経緯があることを忘れてはいけない。順当にプロ入りしていれば、来年には海外FA権が取得できるんだからね。菅野の年齢で、メジャー挑戦に1年という時間は重い。わざわざ1年も回り道してうちに入ってくれたんだから、そんな『借り』に応える意味でもMLB行きを1年早めて希望をかなえてあげる、という考え方は『特例』として十分な理由付けになる」(古参の球団関係者)

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