プーチン大統領に停戦を呼びかけているトルコのトップもまた、癖のある人物のようで、
「エルドアン大統領は民主的選挙で選ばれていますが、国内でジャーナリストや学生を多数拘束するなど、強権的な政治手法が際立っています。また、クルド人に対する弾圧は苛烈で、クルド系野党支持者を拘束したり、シリアやイラクのクルド人居住地域を攻撃したりしています。シリアでは手下の親トルコ派民兵に国境エリアを占領させてクルド人を迫害。昨年11月にも爆弾テロへの報復としてシリアとイラクを空爆し、180人以上を殺害しました」(軍事ジャーナリスト・黒井文太郎氏)
これでロシアとウクライナの仲介役が務まるのか。
続いては、アメリカに次いで世界2位の国防費を計上する中国。習近平国家主席がプーチンに追随するように、いつ「台湾侵攻」に踏み切ってもおかしくない。
去る3月29日に台湾の蔡英文総統がアメリカを訪問すると、中国外務省は「断固反対する」との声明を発表。外交上の小競り合いで済めばいいのだが、黒井氏はこんな不安を口にする。
「もしも台湾が『独立宣言』を発しようものなら、中国は必ず侵攻します。独立宣言をしなくても、公式に『核心的な利益』と宣言していて、可能なら軍事力で手に入れたい考えです。ただ、アメリカの存在があるので、先行きは不透明。また、ベトナムやフィリピンと係争している南沙諸島では、中国が岩礁を埋め立てたりするなどして完全に主導権を奪取しています。米軍の艦艇が航行して反発していますが、中国優位は揺るぎません」
ロシアと同じく、中国では国内で「戦争反対」の声を上げにくい現状がある。
「中国の場合は国内の弾圧も問題で、公安部の政治警察部門『国内安全保衛局(第1局)』が徹底した国民監視を行っています。公安部の『ネットワーク安全保衛局(第11局)』、通称『網絡警察』はネット監視を担っています」(黒井氏)
緊迫するのはロシア、アジア情勢に限らない。4月15日にはアフリカ北東部のスーダンで、国軍と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)の戦闘が勃発し、20日までに300人以上が命を落としたが、隣国のエリトリアでは、恐るべき独裁体制が‥‥。同国は93年にエチオピアから独立を果たし、以来、イサイアス・アフェウェルキ大統領が30年以上にわたって統治してきた。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説する。
「アフェルウェルキが大統領の座に居座り続けているのは国政選挙が行われていないため。また、民間メディアは01年から運営を禁止され、『報道の自由度ランキング』では、北朝鮮を抜いてワースト1位になったこともあります。国民は性別を問わず、16歳から無期限の兵役義務を負うことになり、従わない者がいれば軍の兵士が銃を持って、家から引きずり出すとか。そんな惨状に、毎月約2000人が国外へ逃げ出しているのですが、公正な報道機関がないため、そういった実情がなかなか伝わってきません」
独裁者にとって情報操作はお手のものだろう。
(つづく)