トルコ南部を震源とするマグニチュード(以下M)7.8の地震が2月6日に発生し、4万人以上の犠牲者を出している。地震大国・日本も対岸の火事では済まされない。グラッと来る前に押さえておきたい大地震のアブない前兆とは? 予知の専門家に話を聞いた。
〈トルコで起きた地震の直前に鳥がおかしな行動を取っていた〉
地震発生の翌7日、こんなコメントとともにSNSに投稿された動画には、住宅街を飛び回るおびただしい数の鳥が─。1本の木に100羽以上の鳥が群がっているようにも見え、異様な光景はヒッチコックのパニック大作「鳥」を思わせる。
「確かに、大きな地震の前には鳥の大群が目撃されることが多々ありますが、まだ発生直後ということもあって情報量が少ない。この動画ひとつを取って地震の前兆と決めつけるのは早計かもしれません。なお、同じ鳥類で言えば、ニワトリが深夜に鳴くのも異常行動のひとつと考えられています」
こう話すのは地震前兆研究家の百瀬直也氏。長年にわたって前兆現象のデータ解析を行ってきた同氏だけに様々な実例を挙げる。
「あくまで前兆の可能性としてですが、無視できないのはクジラ。過去には03年8月21日、北海道の厚岸郡浜中町の藻散布海岸にマッコウクジラの死骸が打ち上げられました。M8の十勝沖地震が起きたのは、それから36日後の9月26日。過去の事例から見て、1カ月から2カ月は警戒が必要でしょう」(百瀬氏、以下同)
大阪湾の淀川河口付近にマッコウクジラの「淀ちゃん」が出没したのは今年の1月9日。1月19日には東京湾でもクジラと見られる海洋生物が目撃されているが、不安要素はクジラに限らない。2月7日には新潟県糸魚川市で、12日には富山県高岡市で、イワシの大量漂着が確認された。
〈イワシでやられてイカで助かる〉
百瀬氏は三陸沿岸の漁民の間で伝わるこんな諺(ことわざ)を引用してこう続ける。
「これはイワシの大群が来ると、その後、大きな地震が発生し、津波の後でイカが豊漁になるという言い伝えです。近年では15年2月21日に岩手県大浦漁港でイワシの大群が確認され、その日に三陸沖でM6.4(最大震度2)の地震が起きました。また、今年1月19日、青森県佐井村に深海魚のリュウグウノツカイの死骸が漂着したのも見過ごせない兆候です」
海溝型地震は甚大な津波の被害を及ぼしかねない。特に沿岸部の住民は、深海魚のようなレアな生き物の動向に目を光らせてほしい。