3月8日の国際女性デーにおいて、「ウクライナのために戦い、命をささげたすべての女性に感謝する」との声明を発表し、女性兵士らから喝采を浴びたウクライナのゼレンスキー大統領。
ウクライナ政府では、ロシアによる軍事侵攻当初から「愛国心の象徴」としてウクライナ女性兵士の存在を、SNSやメディアなどで積極的に発信。士気向上のイメージ戦略に活用してきた。
「ウクライナでは昨年2月のロシアによる侵攻直後に総動員令を発令。18歳から60歳までの男性の出国が禁止されました。当初は、ロシアの一方的な攻撃に対し、“祖国は我々の手で守る”という大義に燃えた男性たちがこぞって入隊志願し、入隊所には長蛇の列ができたほどでした。ところが1年が経過しても先が見えない中、徴兵逃れが続出。実はそんな窮状を支えているのが、
ウクライナ国防省によれば現在4万人超の女性が従軍。うち5000人以上は兵士として前線に立っている。軍内の女性比率は約2割あり、これは欧州の中でも格段に高い。
「ウクライナのシンクタンクの調査によれば、ウクライナ侵攻におけるロシア、ウクライナ両国の死傷者合計は35万人超。ウクライナでは現在、男性の志願兵は殆どおらず、この半年の動員は事実上強制的なものになっている。そのため、召集令状が出された男性のうち約1割が“徴兵逃れ”を画策していると伝えられます」(同)
徴兵逃れに使われる方法は「健康不良」と書かれたニセの診断書や、障がい者証明の作成といったものから、18歳未満の子を持つ父子家庭の親も動員対象外であることから、偽装離婚して父子家庭を装うというケースも後を絶たないという。
ただ、動員を強化したところで、無理やり連れてこられた兵士の士気が高まるはずもなく、軍としては頭痛の種だったが、それを穴埋めしたのが急増する女性の兵役志願だったようだ。
「そもそもウクライナ軍に勤務する女性たちは、会計係や補助的な仕事が主で、戦闘任務に就く兵士ではありませんでした。ところが、2014年にロシアがクリミア半島を併合、そして東部ドンバス地方が攻撃にさらされたことで、女性たちは子供たちを救うために自ら戦う部隊『ボランティア大隊』という組織を立ち上げ、戦闘に加わったのです。結果、それが正規軍に組み入れられることになるのですが、やはり志願兵は士気が高い。今後も前線で活躍する女性兵士が増えていくことは間違いないでしょう」(同)
ウクライナ国防省の調べによれば、ロシアの軍事侵攻前の女性兵士の数は3万2000人。それが今年3月時点では4万3000人と、34%も増加しているという。激しく命のやり取りをする戦争の最前線で、きょうも士気高い女性兵士が闘っている。
(灯倫太郎)