楽天グループは3月22日、グループ内の楽天銀行の新規上場で東証の承認を受け、4月21日にプライム市場に上場すると発表した。想定発行価格は、時価3000億円になるという。
グループ内にとどめて収益を得るより、外部に切り離して上場させるのは、IPOで現金を得たいからだ。理由はもちろん、楽天モバイルの巨額赤字の穴埋めをすること。楽天Gは銀行株の5395株を売却し、960億円が得られる想定だ。
「ですが、時期としてどうなんでしょうかね。アメリカでシリコンバレー銀行が3月10日に破綻して、12日にはシグネチャー銀行も破綻という連鎖があって、アメリカ当局が預金の全額保護を打ち出して事態の鎮静化を図りましたが、『リスクを勘案しない銀行とは何なのか』といった金融システムへの疑問が出ています。さらには様々不祥事があったクレディ・スイス銀行に危機が高まり、同じスイスのUBS銀行がスイス政府と金融当局が仲立ちする形で『緊急救済』の買収をすることになりましたが、クレディ・スイスの社債2兆円はパーになるわけで、これら金融不安を受ける形で東証銀行業評価指数も3月に入って11%以上下落しているところですからね」(経済ジャーナリスト)
実際、楽天銀行に先んじて3月29日には住信SBIネット銀行が上場するが、IPO価格は下限の数値だ。
楽天Gのイメージも、非常に芳しくない。楽天モバイルで発覚した元部長らによる基地局建設での水増し請求事件も、約300億円が不正に支払われ、実損は100億円とも言われる。そんなことが可能になったのも、基地局の新設を急ぐあまり、決裁権が発注者でもある元部長にあったからで、事業の進め方に無理があったといわれている。
三木谷浩史会長兼社長が自ら社員向けに語った、年末年始の「1人5回線」獲得ノルマも評判が良くない。
「本物なのかは不明ながら、元社員という人物が回線獲得ノルマ達成のために楽天モバイルのSIMカードを大量買いしてそのまま手元に残っているという写真がSNSにアップされ『自爆営業』として拡散していますし、また、こちらも真偽不明ですが就職・転職サイトの同社の口コミ欄に『ライフワークバランスがない』『とにかくトップダウンで朝令暮改』といった報告がなされている画像もSNSに上がっています」(同)
急いては事を仕損じるというが、目の前の止血にゆっくりしていられない同社だけに、やることなすことアダにならなければ良いのだが。
(猫間滋)