猪瀬直樹「都知事を辞めないと今の妻には出逢えなかった」/テリー伊藤対談(4)

テリー 猪瀬さんと石原さんは長い付き合いだったじゃないですか。もし今、石原さんに言いたいことがあるとすれば、どんなこと?

猪瀬 だから、友達がいなくなって寂しいよね。今、テリーさんとしたような話を、わかる相手がいない。

テリー ああ、そうか。今回の本に出てくる言葉だけど、石原さんも猪瀬さんも〝価値紊乱(びんらん)者〟で、似た者同士だからね。

猪瀬 「価値紊乱」って難しい言葉だけど、要するにひっかき回して、攪乱して、沈滞した空気を攪拌するっていうことだよね。それで同調圧力に屈しない、個を埋没しないようにしましょうっていうことなんだけど。

テリー そういう人は国会にはいない?

猪瀬 永田町にはいないね。

テリー そうか、それは寂しいな。奥さんは?

猪瀬 奥さんは理解してる。

テリー いい奥さんと出逢えたね。

猪瀬 良かったよね。あれも都知事を辞めないと出逢えなかったからさ。難しいよね、いろいろ人生はね。

テリー でも実は、美人の奥さんのほうが猪瀬さんに惚れてたんでしょう。俺、奥さんに聞いたもん。

猪瀬 聞いたのか(笑)。

テリー 聞きましたよ。「何で猪瀬さんみたいな気難しい男と結婚するの?」って。そしたら「いや、私のほうが好きになりました」。猪瀬さんの本をたくさん読んでるんだよね。

猪瀬 そうですね。

テリー 猪瀬さんは夜のほうも元気なの?

猪瀬 元気だよ。

テリー いける?

猪瀬 いけるよ。

テリー わぁ! これ太字にしてもらおう(笑)。今までの難しい話は全部書かなくていいから、「猪瀬、夜も元気」ってさ。あ、そう。すごいなぁ!

猪瀬 僕は、テニスもランニングもやってるしね。テリーさんも若いじゃない。気持ちが若いからね。

テリー 猪瀬さんはいつもテニスやってるよね。

猪瀬 テニスやったらくたびれるでしょう。その後、ランニングするの。なぜかっていうと、体が温まってるから、(やる気の)スイッチが入りやすい。だから、テニスを1時間半やって、5キロ走ってるんだよ。

テリー すごい! それで夜も元気なんだ。じゃあ最後になりますけど、改めて本の読みどころを猪瀬さんから。

猪瀬 読みどころ? テリーさんはどこがおもしろかったの? それが読みどころだよ。

テリー そうね。俺はこの本を読んで、改めて石原さんの若い頃の作品をたくさん読みたくなったかな。

猪瀬 そうだね。それは言えると思うな。テリーさんも年齢が近いからわかると思うけど、小学3年生か4年生ぐらいの時に「太陽の季節」の映画のポスターが貼ってあったでしょう。それをPTAが「あれは不良の映画だから見ちゃいけない」みたいなことを言ってたんだよね。

テリー まだ見る年齢じゃなかったけど、明らかに不良っぽいというかね。

猪瀬 その頃、「十戒」とか「エデンの東」のポスターも貼ってあったけど、雰囲気が違うんだよね。それで、その後に石原裕次郎が出てきてスターになるっていう流れなんだけど、その頃は石原さんはたくさんの傑作を書いてる。

テリー じゃあ、最初に読み直すならその頃の作品だ。

猪瀬 それを三島由紀夫もすごく評価している。やっぱり改めて調べてみて、あれほど三島由紀夫が石原さんをライバル視してたのは、今回の一番の発見だったな。

〈テリーからひと言〉

 猪瀬さん、久しぶりだったけど元気そうでうれしかった。相変わらず口は悪いし(笑)。そのバイタリティーで作家として、政治家として、ガンガンやってください。

猪瀬直樹(いのせ・なおき)1946年、長野県生まれ。1983年、「天皇の影法師」(朝日新聞社)でデビュー。1987年、「ミカドの肖像」(小学館)で「大宅壮一ノンフィクション賞」受賞。主な評伝小説に「ペルソナ 三島由紀夫伝」(文藝春秋)、「ピカレスク 太宰治伝」(小学館)など。「昭和16年夏の敗戦」はロングセラーとして有名。2007年、東京都副知事、2012年には東京都知事に就任。2022年、参議院議員に。現、日本維新の会参議院幹事長。最新刊「太陽の男 石原慎太郎伝」(中央公論新社)発売中。

*週刊アサヒ芸能3月30日号掲載

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