昭和名作ドラマのアナザーストーリー(1)金八先生の「加藤優」直江喜一が「沖田浩之とのその後」を語った

 1980年に放送された「3年B組金八先生」(TBS系)の第2シリーズで加藤優役として注目を集めた直江喜一(60)。40年以上が過ぎても色褪せない、名場面の裏側を聞いた。

 同作品は学園ドラマの金字塔として今なお多くのファンに愛されている。中でも非行や校内暴力、いじめ、家庭不和による生徒のストレスなどに焦点を当てた同シリーズは、最終回で34・8%という驚異的な視聴率を記録し、屈指のヒット作となった。

「腐ったミカン」とも呼ばれた優が転校前に在学していた中学校に乗り込み、放送室に立てこもったことで逮捕され、中島みゆきの「世情」が流れる中、武田鉄矢演じる教師・坂本金八の目の前で警察官から手錠を掛けられて護送されるシーンは衝撃的だった。

「『老人みたいな燃え尽きた感じで、連れ去られるところを演やっていた』とよく言われますけど、あのシーンは後から発売されたDVDだと本放送よりも1〜2秒ほど誤差があって、一番いい表情のところが切れているんです。当初はもうちょっと後ろから歩いていて、引きから撮っていました」

 警察から解放された、優と沖田浩之演じる松浦悟に金八が平手打ち。「お前たちは俺の生徒だ!」と涙を浮かべながら抱き寄せるシーンは視聴者の涙を誘った。

「あれはアドリブでしたが、その場の雰囲気で『何かやるな』とは思っていた。先生が手を振って来たので、絶対に動かないようにしたら、パチーンとちゃんと顔に当たりましたよ」

 まさに阿吽の呼吸による迫真の演技だったようだ。

 一緒に捕まった盟友・悟とは、優が初登場する第5話の劇中で乱闘を繰り広げたが、オーディションの最中から沖田とはひと悶着があったという。

「1次面接の時、言わなくてもいいのに番組スタッフが『竹の子族ってどう思う?』と話を振ってきた。それで『どうって言われても僕は踊れないし‥‥、まあでも、ちょっとチャラいんじゃないですか』と言っちゃったんです。そうしたら横から(沖田が)『お前なんかに言われたくねえ』みたいになって。それで2次面接に『あの人もいるんだろうな』と思いながら行ったら、案の定いて。『あっ、先日はどうも』って、あの時はバツが悪かった(笑)」

 それでも同い年。撮影が始まると打ち解けるのも早い。交流は番組終了後も続いた。

「やはり三つ子の魂百までで、当時の仲間ですからね。偶然にTBSで会った時も俺のところに顔を出して『何時に終わるの?』って。会えば懐かしい話も出る。川崎大師に初詣に行ったら『優!』『おう! 元気か?』って。あいつが奥さんといて、家族同士でおしるこを食べたこともありました。でも、それから1年くらいして、亡くなったんですよね。お葬式にも行きました」

 他の共演者との関係でもそうだが、金八先生をはじめ、私生活でもみんなが役名で呼び合っているといい、一時代をともに生きた絆を感じさせるのだ。

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