12月1日から大手ファッション通販サイト「ロコンド」の正社員となり、「女優兼会社員」となった片瀬那奈。芸能界引退後に会社勤めをするのは珍しくないが、知名度のある現役芸能人としてはレアケースだ。ただし、前例がないわけではない。
例えば、シンガソングライターの小椋佳は、第一勧銀(現・みずほ銀行)の証券部証券企画次長や本店財務サービス部長を務め、一時は頭取候補に名前が挙がったこともあるエリート銀行員だった。一方で作詞家・作曲家としての顔を持ち、在職中には布施明の「シクラメンのかほり」(73年)や梅沢富美男の「夢芝居」(82年)、美空ひばりの「愛燦燦」(86年)など数々のヒット曲を世に送り出している。
同じ歌手で「横浜銀蝿」のジョニーは、引退後の88年にキングレコードに入社したが、20〜21年には会社に籍を置いたままバンドに復帰。しかも、当時の肩書きは同社上席執行役員で、グループ企業の「ベルウッド・レコード」の代表取締役社長を兼務するなど、サラリーマンとして頂点まで上り詰めている。
また、80年放送の「3年B組金八先生」(TBS系)第2シリーズで、不良生徒の加藤勝役で一躍ブレイクした直江喜一も兼業俳優のひとり。創業436年の歴史を持つ上場企業「松井建設」で部長を務め、芸能活動と二足のわらじを履いている。
他にも格闘技イベント「RIZIN」で朝倉未来との対戦歴があり、国内トップクラスの総合格闘家として活躍する弥益ドミネーター聡志は、大手食品会社に勤める会社員。元プロボクサーの木村悠は、商社マンとして働きながらWBC 世界ライトフライ級王座を獲得している。
「芸能人やスポーツ選手にとって、二足のわらじは、いざという時の経済的基盤になるだけでなく、社会人としての常識やマナーを身につけられる格好の場。それに多角的な視点から物事を見ることができますし、最近はダブルキャリアという考えもある。今後も、彼らのような兼業会社員の芸能人やプロアスリートが増えるでしょうね」(キャリアコンサルタント)
特筆すべきは、彼らのもう一方の肩書は、決して「副業」ではないという点だ。マルチな才能を存分に活かしているのである。