ロシア軍侵攻から1年が過ぎても停戦の糸口さえ見つからないウクライナ。日本で報道されるのは戦争絡みのニュースばかりだが、同国はサッカーが盛んな国としても有名だ。
21-22シーズンの「ウクライナ・プレミアリーグ」は戦争状態に突入したことでリーグが中断。そのまま再開されることなく終了している。だが、今シーズンは8月23日に開幕を迎え、現在は第17節まで消化。他の欧州各国リーグに比べると進行が遅いが、これは戦況が理由ではなく寒冷地であるためで、今年に限った話ではない。
とはいえ、ミサイルなどによる攻撃の危険性がある中でのリーグ開催は、日本人の感覚からすれば想像もつかない。激しい戦闘が行われているウクライナ東部に本拠地を置くクラブだってあるはずだ。
「ドンバス地方と呼ばれる東部のドネツク州とルハンスク州、さらに南部のザポリージャ州とヘルソン州は、以前から親ロシア住民が多い地域。実は、今回の戦争が始まる前から複数のクラブが別の都市に疎開しています」(サッカージャーナリスト)
そのひとつが昨シーズンのリーグ優勝クラブで、今シーズンも現在首位の「シャフタール・ドネツク」。欧州サッカー連盟(UEFA)が発表する最新の「UEFAクラブランキング」では24位と5大リーグのトップクラブに割って入ってランクインしている。ほぼ毎年のようにチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場する強豪だが、昨年からはポーランドの首都ワルシャワに疎開している。
「しかも、同クラブが最初に疎開したのは14年で、今年で10年目。これまでもウクライナ国内のリヴィウやハルキウなどを転々としています。それでも結果を出し続けるのは賞賛に値しますが、ドネツクに戻る見通しは未だ立っていないのが現状です」(前出・ジャーナリスト)
リーグ再開の際、同国サッカー連盟のホームページに掲げられたのは、《私たちがプレーする限り、我々は無敵だ!》という力強いメッセージ。戦火の中で強行されるリーグ開催には賛否の声があるが、ウクライナ国民の希望の光となっているのは間違いない。
*写真はFCシャフタール・ドネツクのホームスタジアム