鈴木宗男「中国の台湾侵攻はない。余計なちょっかいがなければ」/テリー伊藤対談(3)

テリー 今、宗男さんが言われたことはすごく現実的ですよね。やっぱり日本のいちばんの問題は北方領土だと思うんですよ。正直言って、安倍総理がいた時は「もしかしたら2島なら返ってくるのかな」と思ってました。でも今は、まったくそんな話はどこかにすっ飛んじゃった感じです。

鈴木 おっしゃる通りです。今のロシアは「もう岸田政権では日ロ関係の改善はない」と、そこまで厳しく見てます。

テリー 岸田政権とは関係なく、ハナから返す気ないんじゃないですか。

鈴木 2018年11月の安倍総理とプーチン大統領のシンガポール合意。もし、安倍総理が健康を害さないで、もう1年やってればあの時にケリはついてました。ただ、体調を壊して辞めてしまって、その後の菅(義偉)さんも1年で退陣してしまったので。

テリー この先はどうしたらいいんですか。

鈴木 今の状況ではロシアはまったく受け付けません。ロシアからすれば、「何で日本はこんなにもアメリカと同じ価値観で動くのか」「過去の約束はどうなってるんだ」と、そういう気持ちなんですよ。

テリー 僕は岸田さんは、中国の台湾侵攻も考えたんじゃないかと思うんです。もしここでロシアに対して曖昧な態度を取ったら、実際に中国が台湾へ、あるいは尖閣諸島に侵攻した時に、アメリカ軍が出てくれないんじゃないかと。

鈴木 テリーさんね、2014年のクリミア紛争の時、オバマ大統領は「経済制裁に日本も協力しろ」と言ってきましたが、安倍総理は「日本には北方領土問題がある。日本の立ち位置、判断でいく」と毅然と応えるとオバマ大統領はガチャッと電話を切ったそうです。

テリー 日本は経済制裁に協力しませんでしたよね。

鈴木 そしたら外務省の幹部は「オバマさんは伊勢志摩サミットに来ない」「広島の原爆慰霊碑にも献花しない」と悲観的に受け止めました。それでもオバマ大統領は来たんですよ。国益とはそういうものなんです。アメリカだって、日本との関係を切るわけにはいかないんです。アメリカは今、中国と経済戦争もしてます。そしてロシアともぶつかっている。北朝鮮もあります。一度に2つも3つもぶつかり合いはできないんです。

テリー 中国の台湾侵攻の可能性をどう見てますか。

鈴木 私はないと思います。

テリー ない?

鈴木 はい。余計なちょっかいを出さなければ。同時にね、やっぱり歴史は積み重ね、外交は積み重ねですよ。尖閣諸島だって、石原慎太郎さんが「東京都が買う」と言ってから騒ぎになりました。そして野田民主党政権が「国有化する」と言ってから、中国の船が日本に来始めたんですよ。これが余計なちょっかいなんです。

テリー ああ、そういうことか。

鈴木 しかもねテリーさん、尖閣というのは、あの日中国交正常化の時でも、田中角栄首相と周恩来さんとの会談では棚上げだったんです。ところが国交正常化の1年前に国連が海底資源の調査をした結果、「あそこに油もある、ガスもある」となってから、台湾も中国も「俺のものだ」、日本は「いや、日本固有の領土だ」とぶつかってきたんですよ。私はね、こういう歴史をきちっと検証すべきだと思うんです。今はそれをやらずにみんな現象面だけで語るから、ウクライナも尖閣もややこしくなるんです。

週刊アサヒ芸能3月2日号掲載

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