佐藤治彦「儲かるマネー駆け込み寺」高額医療費が戻らない「2万1000円ルール」に注意!

 テレビで「大雪が予想されるので、不要不急の外出は控えてください」ってアナウンサーが言うけど、そんな時でも荷物を運ばなくてはいけないのがプロのドライバー。もう命がけです。万が一のことがあったら家族や仲のいい人が悲しむから、どうか無理はしないでください。命をかけるには給料が安すぎます。

 さて前回は、高額療養費制度では、収入に応じて病院の窓口で支払う自己負担の1カ月の上限額がおおよそ決まっていると書きました。年収370万円から770万円なら毎月8万100円と少しで済み、例えば月に150万円の医療費がかかったとしても9万円くらいの自己負担で済む、という話をしましたが、入院時期によって不思議なことが起こることがあります。

 例えば手術をして15日間入院したとする。同じ月の中で終わることもあれば、2月と3月にまたがることもある。もし同じ月内に終われば自己負担は9万円と少しで済むけど、月がまたがり、2月分の請求として75万円、3月分も75万円と請求されたらどうなるか。

 75万円の医療費の窓口での3割負担は22万5000円。ただし、高額療養費制度の適用で実質負担はそれぞれ8万1500円ほど。合計で16万3000円だ。同じ150万円の医療費でも同じ月なら9万円ほど、月がまたがると16万円以上と大きく違うことになる。

 また、時には長期間の入院、治療が必要な時もある。高額療養費は過去1年に3カ月以上支払いをした場合は多数回扱いとなり、毎月の限度額はもっと低くなる。例えば8万100円と少しではなく、毎月4万4400円となる。でもこれ、何となく縁起が悪い数字だよね。444、死死死って。住民税非課税の人なら2万4600円だ。

 こうして高額療養費制度の説明をすると「じゃあ、医療費として保険適用部分は毎月8万円くらいまでだと考えて大丈夫か?」って質問をされる。しかし70歳未満の場合は「2万1000円ルール」があることは注意しておくべきだ。つまり、2万1000円以下の医療費は高額療養費の計算の対象にならないのだ。

 これは大きな病気ではなく、小さな治療が家族で重なった時などに起こりうる。

 例えば3割負担で夫が病院で7万円、病院にない最新の機器での検査が必要だということで別の検査機関で1万5000円の検査。つい歯の治療で2万円。妻の病気で自己負担2万円。子供が骨を折って2万円をそれぞれ払ったとする。合計14万5000円だ。

 なので高額療養費制度で8万100円と少しを超えた部分は戻ってくるかと思いきや、この例の場合は1円も戻ってこない。2万1000円ルールは頭の片隅に覚えておくといいだろう。

 さて、2週にわたって取り上げた高額療養費制度だが、医療費の負担は場合によって国も負担して維持している。ところが昨年7月、財務省は国の負担を廃止する方向で検討すべきとしました。細かい説明は省くが、これは毎月払う健康保険料の値上げなど、国民負担の増大につながる可能性がある。それでなくても高額療養費制度は平成に入ってから次々と制度変更され、どんどん自己負担が高くなってきた。

 私が30代の頃、当時、厚生大臣だった小泉純一郎氏にテレビで単独取材し、高額療養費を改悪する可能性はあるか? と聞いたのだが、はぐらかして答えてくれなかった。その不安は的中。こういう大切なことをテレビも新聞もほとんど報道してくれない。我々ももっと興味を持ち、ルール変更に関しては意見を持ち、政治に注文をしていくべきだと思う。

 何かいろいろと考えすぎて病気になりそうだよ。アサ芸の他のページを見て癒やされるとしますか。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活動中。著書「おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方」(ぱる出版)ほか多数。

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