中国外務省「人気報道官」突然異動の原因は「夫人の不用意なSNS投稿」か

 強気で遠慮のない物言いで「戦狼外交の顔」として知られてきた、中国外務省の趙立堅報道官が同職を退任。国境海洋事務局の副局長に就任することが9日、政府のウェブサイトを通じて明らかになった。

 戦狼外交とは、主に中国がとる好戦的かつ攻撃的な外交のことで、語源は中国のアクション映画「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー」からとった造語だとされる。

「趙氏は河北省出身で、長沙鉄道学院(現・中南大学)卒業後、日本の外務省にあたる外交部に入省。2009年に米国赴任すると在米中国大使館の一等書記官を務め、パキスタン勤務を経て、20年2月に報道官に就任したというエリート。彼は2010年からTwitterを始めているのですが、2019年には米国内における黒人差別問題でスーザン・ライス元大統領補佐官と激しい応酬を展開して話題になりました。さらには報道官就任早々の3月12日には、『米軍が感染を武漢に持ち込んだかもしれない。(米国は)透明性を持て!アメリカは中国に説明せよ!』と自身のTwitterに投稿。翌13日にも、新型コロナウイルスの発生源がアメリカ軍の研究施設だとする持論をアップし、米側が中国の駐米大使を呼びだして抗議したこともありました。まさに『戦狼外交』の急先鋒とされてきた人物です」(全国紙記者)

 中国の立場を強気な態度で明確に説明する姿勢は国民に大人気で、その証拠に中国では外交部報道官の発言を一日数回、中央テレビなどで放映するのだが、趙氏の発言時の視聴率はダントツだったという。

 そんなこともあり、今回の趙氏の突然の異動に対しては中国国内でさまざまな憶測が流れている。その一つが、趙夫人がSNSに投降したコメントが、何らかの影響を与えたのではないかという説だ。中国の国内情勢に詳しいジャーナリストが説明する。

「実は12月2日以降、趙氏が会見場に姿を見せなくなったことで、新型コロナに感染したのではないかと話題になっていたのですが、先月19日に趙氏の夫人である湯天如氏がソーシャルメディア微博に『解熱剤が手に入らない』というコメントを掲載。すると、直後から《庶民の同情でも買うつもり?》といった批判的な意見が殺到。湯氏はコメントを削除したのですが、翌日には『隣人が分けてくれた解熱剤4錠で何とか解決しました。風邪薬などをお持ちの方は、周辺の隣人に分けて一緒にこの困難を克服しよう』と改めてコメント。するとこのコメントについても《庶民のふりをしてよく言うわ!》といった批判が相次いだ。これが直接的な原因かどうかはわかりませんが、中国政府内では身内の不用意な発言で形勢逆転するというケースがこれまでにもあり、そんなことから夫人の発言が原因では?といった憶測が飛んでいるようです」

 趙氏が就任する国境海洋事務局は、陸上や海上の国境に関連する外交政策の立案などを担当する部署だが、次に趙氏が姿を見せるのはいつか……。国民の関心が高まっている。

(灯倫太郎)

ライフ