2023年ニッポンを襲う危機(2)物価高に追い打ちの「大増税」は何をもたらすか

「今を生きる国民が自らの責任として、しっかりその重みを背負って対応すべきものである」

 昨年12月13日に開かれた自民党の役員会で、岸田文雄首相は増税の必要性をこう説いた。23年度からの5年間で防衛費が総額43兆円規模に拡大することで毎年4兆円程度の財源が必要となり、そのうち1兆円を増税によってまかなうことが決まったためだ。

 増税されるのは「所得税」「たばこ税」「法人税」の3つで、「復興特別所得税」が延長される。そして、この中で増税の比重が最も重いとされるのが、4~4.5%の税率を上乗せされる法人税だ。

「岸田首相は中小企業に配慮して所得2400万円以下の企業は控除の対象となるため、増税の対象となるのは全法人の6%弱であることを強調しています。しかし、これはあくまで法人の数であって、中小企業よりも大企業の方が社員数は圧倒的に多いですからね。また岸田首相は、物価高に負けない賃上げを実現していかなければならないとの発言もしていますが、法人税が上がれば企業が賃上げにシビアになるのは明白。所得税は上がり賃金は上がらないという事態が待ち受けているのです」(経済ジャーナリスト)

 21年度版の「家計調査報告」によると、貯蓄が最も多いのは60代で、その次が70代以上であることが明らかとなっている。しかし、こうした高齢者たちのほとんどは増税の影響はほとんど受けないと見られ、またしても苦しむのは働き盛りの世代だ。防衛費を拡大して国の安全を守るのは理解できるが、この物価高で苦しい家計にさらに増税がやってくるのでは、国防以前に国民の生活自体が成り立たなくなってしまう。

「防衛費拡大で年間4兆円のうち1兆円が増税でまかなわれますが、実は残りの3兆円の財源については不透明なところもあり、今後さらに増税となる可能性もあります。また、岸田首相肝いりで倍増されるという子ども予算についても財源のメドは立っていない。そのため首相は総裁選の際に10年程度は消費税は上げないと豪語していましたが、消費税が増税される可能性も出てきた。増税は24年度から段階的に実施される計画ですが、ますます貯蓄する人が増え景気が冷え込むことが予想されます」(前出・経済ジャーナリスト)

 庶民にとってはまたしても厳しい年になりそうだ。

(小林洋三)

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