経済評論家の森永卓郎氏も、この増税の流れは止められないと嘆く。
「10月からのインボイス制度でフリーランス・零細企業へ増税することで、おそらく政府は2千数百億円の増収になるはずです。一方、答申に列挙された諸控除の圧縮に関しては、内閣支持率が下がったこともあり、来年以降に先送りになる見込みです。しかし、『退職金増税』は政府の『骨太の方針』にも記されており、実行される可能性がある。今のところ具体的な制度設計は発表されていませんが、少なく見積もっても、定年退職者は片っ端から増税ということになってしまう」
サラリーマンにとって退職金は老後生活の虎の子マネー。おめおめと徴収されるのを許せるはずもないのだが‥‥。
「これまでは勤続20年以下の人よりも20年以上の人がより控除を受けられる仕組みになっていました。ところが今度は、『20年以下の人だけ多く税金が取られて不公平だ』という論理で適用しようとしている」(荻原氏)
もはやこの大増税の流れを今からでも食い止めることはできないものか。政治部デスクが解説する。
「この『サラリーマン増税』は降って湧いた話ではなく、安倍政権の時代からずっとくすぶっていた問題です。安倍さんは回顧録の中でも〈財務省は政権を平気で倒しに来る〉などと記しているように、徹底した“財務省嫌い”。官邸を経済産業省出身の官僚で固め、増税をブロックしていた。ところが、岸田総理に代わってからは、再び財務省が官邸を主導するようになり、一気に増税に振れてしまったわけです」
これまで歯止めの役割を果たしてきた安倍元総理亡き後は、その流れは一気に激流と化すというのだ。
実際、政府の「見えない増税」はすでに始まっているという。
「社会保険料などはバンバン上がっています。信じられないことに雇用保険などこの半年で2回も上がっている」(荻原氏)
各自、給与明細で「ステルス増税」を確認してみるといい。
「岸田総理は1兆円の防衛増税、次元の異なる少子化対策や子ども家庭庁の設置などを矢継ぎ早に行った。防衛増税には所得税、法人税、たばこ税を充てる方針ですが、その時期は先送り。つまり、これらの財源を確保するためにも控除関係の圧縮は一気に片づける構えなのです」(政治部デスク)
「未来世代への責任」などと大見栄を切り、その代償を老後貯金から抜き取るとは、もはや人倫にもとる暴挙ではあるまいか。