「アントニオ猪木を語り尽くそう」(3)新幹線の隣に座った人をタニマチに/夢枕獏×ターザン山本×小佐野景浩スペシャル座談会

夢枕 猪木さんにはもう10年ぐらい、何かで頑張ってほしかったですね。

小佐野 あらゆる物質を蒸発させてしまう水プラズマの実験に成功して、フィリピンのゴミの山を一掃するという計画がありました。

山本 水が元だから、お金がかからない(笑)。猪木さんは地球の食料問題でアントン・ハイセル、エネルギー問題で永久電池、ゴミ問題で水プラズマと、一発逆転を狙うんだよね。

小佐野 ハイセルには37億円突っ込んだそうですよ。

夢枕 まさか全部、新日本プロレスの上がりを回していたわけじゃないでしょ?

山本 いやいや、引っ張ってくるんですよ。猪木さんは凄い人で、新幹線の隣に座った人をすぐタニマチにしてしまう。

小佐野 知り合いのライターが猪木さんと新幹線で乗り合わせて、話をしているうちにブラジルの土地を買わされてしまったと(笑)。

夢枕 僕の知り合いのライターも新幹線で偶然会ったら「金を貸してくれない?」って言われたらしいですよ。それも何千万単位の金を(笑)。

小佐野 馬場さんは引き抜き合戦の手打ちの時に、ハイセルへの投資、さらには「一緒にプロレス以外の事業をやりませんか?」と誘われたと言ってましたね。

山本 金に執着があるわけではなく、金は回るものだと思ってるから、そこにある金は自分の金だと思ってるんですね。現金を持ってないんだから、凄い自由ですよ。それで借りたものは絶対に返さないからね。整体師の吉原達夫さんという人が「猪木というのは、借りるテクニックが凄い。俺に一番金がある年末の26日ぐらいに〝入用があるので貸してください!〟って、状況を読み切って借りに来る。350万円ぐらいやられたけど、返してもらおうとは思わない」って(笑)。

夢枕 向こうが「返さなくてもいいや」と思って出すというのが猪木さんの不思議なところですよ。徳なのか、あきらめなのか、いずれにしても凄い。

山本 あと猪木さんはパクリの天才で、中国のハルピンに行った時に「次の展開は、南極でプロレスをやるべきでしょ」って言ったら、あくる日の東スポにドカンと出て。びっくりしましたよ。だって俺が言ったことですよ(笑)。もう自分のアイデアになってるわけですよ。人のものは自分のものなんですよ。

夢枕獏:作家。77年のデビュー以降、数々の文学賞を受賞する一方でプロレス・格闘技の熱心な信奉者としても知られる。テレビで放送された猪木の試合は全て観ているというマニア。

ターザン山本:元「週刊プロレス編集長」としては、むしろジャイアント馬場に近い存在だった。しかしアントニオ猪木に煙たがられる存在となりながらも、実は人生を賭けたほどの大ファン。

小佐野景浩:元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。高校時代に新日本プロレスのファンクラブ「炎のファイター」を立ち上げた生粋の猪木信者。

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