ロシア軍によるオデーサへのドローン攻撃により、複数のエネルギー施設に被害が発生。多くの地域で停電が発生し、約150万人に影響が出ているという。
一方、ウクライナ軍はメリトポリで反撃するなど南部で戦闘が激化しているが、そんな中、ウクライナ・ルハンスク州知事が11日、ウクライナ軍が同州カディフカにあるロシアの民間軍事会社「ワグネル」の拠点であるホテルを攻撃し、医療不足からワグネル部隊の「少なくとも50%」が死亡すると発表、両陣営に衝撃が走っている。
「ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は、元々ケータリング事業を営んでいた実業家で、大統領府と契約を結んでいたことから『プーチン大統領のシェフ』と呼ばれていた人物。サンクトペテルブルクで軍事会社を立ち上げた後は、ウクライナ南部クリミア半島やシリア、リビア、マリ、中央アフリカ共和国などに傭兵を派遣。各地で戦争犯罪や人権侵害を繰り返してきた悪名高い雇い兵組織として、その名を轟かせてきました」(全国紙記者)
そして、ワグネルの存在感をより強くしたのが、ロシアによるウクライナ侵攻だった。ウクライナ当局によれば、プリゴジン氏はロシア国内の受刑者に対し、報酬や恩赦を与えることを条件に兵士として採用。すでに数千人を前線に送っているとも伝えられる。
「ゼレンスキー大統領も、プリゴジン氏が採用した元受刑者は最大2000人との見方を示しています。ただ、ウクライナ側の説明では、彼らのほとんどがロシア軍の『使い捨て兵士』で、その大半は、最初から戦死する運命にあるといわれます。それが事実なら、人間の盾として雇い入れているという事になります」(同)
かつてAFP通信がウクライナで暗躍するワグネル兵士の証言を伝えていたが、それによるとワグネルの「元受刑者傭兵」は、暗くなる夕方から陣地に向けて前進を命じられ、ある地点で数分間とどまるのだとか。そして、相手が発砲せざるを得ない状況を生み出し、敵陣の場所を探り当てることができるとロシア側がそこに大砲を撃ち込み、次に精鋭部隊を送り込む、という。つまり「囚人兵」に課された任務は、まるで「人間の囮」だというのである。
「今回攻撃されたカディフカにあるワグネルの拠点に、どれほどの数の兵士が在籍し、被害の程度も明らかになっていませんが、貴重な『使い捨て兵士』を大量に失えば、ロシア軍はさらに劣勢に立たされることになるでしょう」(同)
攻撃時、プリゴジン氏はホテルにいなかったことが確認されているが、同氏しかりプーチン氏しかり、人の命を軽視する指導者に今後、どのような因果が巡ってくるのだろうか。
(灯倫太郎)