16日に開幕した5年に1度の中国共産党大会が22日、閉幕した。大会では習近平国家主席の権威をさらに高めるため、習氏の党における核心的地位と思想の指導的地位を確立する「二つの確立」がスローガンとして加えられたという。
「閉幕式の終盤、習氏は自らの権威強化に向けた表現を党規約に盛り込む改正案に関する決議の採決をはかり、『同意しない人』に挙手を求めたのですが、反対できる出席者などいません。すぐに採択され、全会一致で承認が決まったようです」(中国政治に詳しいジャーナリスト)
ただ、今回の党大会には、「党は個人のものではない」と苦言を呈した江沢民元国家主席が欠席。理由は明らかになっていないが、胡錦涛前国家主席が閉幕式の最中、突然退席するという異例の出来事もあり、習近平氏への権力集中がより色濃いものとなった。
「中国共産党には『68歳で引退』という慣例があることから、現在の最高指導部である『チャイナセブン』メンバーのうち、栗戦書・全人代常務委員長(72)と、韓正副首相(68)は慣例通り、中央委員の名簿から外されることになりました。ところが、習氏自身が『68歳引退』の慣例を破って3期目入りしたにもかかわらず、今回、まだ68歳に満たない李克強首相(67)と、汪洋・全国政治協商会議主席(67)の退任を決めた。両氏は習氏が嫌う共青団(中国共産主義青年団)出身であることから、彼ら非主流派の影響力を排除するための人事という見方もある。今後、習氏の中央集権体制がますます強固になるということでしょうね」(同)
まるで毛沢東時代の「個人独裁」を彷彿とさせる党人事だが、米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が党大会での習氏の様子が以前と違うとして“健康不安説”を報じ、波紋が広がっている。
報道によれば、党大会が開幕した16日の冒頭、習主席により読み上げられた政治報告が、前回大会の約4時間に比べ、約1時間50分と半分以下になり、さらに声にも張りがなく、時々咳をするなど、明らかに体調が悪そうだったというのだ。
「今回、習氏が読み上げた報告文は、前回の半分程度の量で、さらに“胡錦濤元主席から党トップの座を譲り受け、多くの問題を解決してきた”という部分が割愛されていたといいます。習氏としては、今さら説明する必要もないだろうという思いがあったのかもしれませんが、9月初旬から2週間、習氏の動静が伝えられなかったこともあり、健康を不安視するような憶測が流れたと考えられます」(同)
表には出ないが、共青団出身の重鎮を排除してポストを「習派」で独占することに、水面下では不満も渦巻いているという。権力者にとって、病気が命取りになることは言うまでもない。権力の一極集中を目論む習主席の前に立ちはだかるものとは‥‥。
(灯倫太郎)