ロシアのプーチン大統領は19日、一方的に併合したウクライナ東部と南部の4つの州に戒厳令を出すことを発表。20日午前0時から導入された戒厳令により、住民の動員や強制移住が可能になったことで、4州住民の大量徴兵や本格的な総攻撃への懸念が広がっている。
チェチェン紛争に従軍し、シリア軍事介入の総司令官も務めた「アルマゲドン将軍」こと、スロビキン上級大将を統括総司令官に任命したプーチン氏。しかし、依然としてロシア軍前線での士気低下は甚だしく、脱走や投降が続出。スロビキン氏自身、露国営テレビのインタビューに応じ「(戦況は)困難な状況にある」と苦戦を認めている。
「独立系メディアの報道によれば、ウクライナ国防省が開設している“投降ホットライン”に現在も問い合わせが殺到しており、SNS上では銃を持ったロシア兵と思われる男性が《防弾チョッキもヘルメットもない。この銃は倉庫からの処分品で70年代〜80年代の武器だ。ここにいる9割の人は病気だ!》と訴えたり、《夜は暖房器具が一つだけ。テントを一瞬離れただけで防寒具まで全部盗まれる。私の靴もお金も盗まれた》と、若い兵士がテント内で撮影するなど、前線での悲惨な実態が次々に報告されています」(全国紙記者)
そんな士気の乏しい軍に代わり、プーチン氏が厚い信頼を置いてきたのが非公式の民間軍事会社「ワグネル」と言われる。
「ワグネルは2014年の創設以来、民間の軍事会社として14年のクリミア併合をはじめ、中東シリアのほか、スーダンやリビア、モザンビーク、マリ、中央アフリカ共和国を含むアフリカ諸国でも、大きな功績を残してきました。ところがここへきて、その精鋭部隊にもほころびが見え始めているというのです」(同)
現在、ウクライナ戦争に投入されているワグネルの傭兵はおよそ5000人とされるが、
「特に占領地における部隊は、前方から高機動ロケット砲システム『HIMARS』の攻撃を受け、後方からはパルチザンの破壊工作に晒され、相当数の死者が出ているといいます。そのためワグネルでは《オーケストラ『W』は君を待っている》をスローガンに新兵の募集看板をモスクワのあちこちに設置して異例の公開求人に踏み切りましたが、戦況が劣勢の中、応募は思わしくない。そこで今度は、刑務所で囚人をスカウトして、恩赦と引き換えに戦地へ送り込んでいるというのです。ロシア軍同様、人員確保に苦慮している状況が伺えます」(同)
また、軍の部分動員がはかどらない中、ワシントンポスト紙は16日、ロシア警察と強制徴収隊がモスクワにあるホームレスの憩いの場で数十人を拘束。建設会社の寮からは200人余りが連れ去られ、リハーサル中のミュージシャンや配達中の作業員まで連行されたと伝えた。
こうした強制徴収により、モスクワやサンクトペテルブルクの市民からも反戦の声が徐々に高まっている。戒厳令という新たなカードを切ったプーチン・ロシアだが、苦しい舵取りが続く。戦況を打開できるかは不透明なままだ。
(灯倫太郎)