フィリピン司法省が、オンラインカジノ(POGO)を運営する175業者の営業を停止し、従業員として働く約4万人の中国人を強制送還すると発表したのは、先月26日のこと。地元メディアによれば、10月に入り続々と中国へ向け、強制送還が始まっているという。
フィリピンでは、ドゥテルテ前政権が発足した2016年以降、多数のカジノ業者が出現。顧客も従業員も中国人が主で、中国人向けの渡航ビザ要件を緩和したことで、業界全体のパイが急拡大していたという。
「特別行政区のマカオ以外はカジノを禁止している中国に対し、フィリピンは比較的規制が緩かった。そこで、中国のオンラインカジノ業者がこぞってフィリピンに営業拠点を設けたのですが、いかんせん、金が絡むギャンブルですからね。当然のごとく、中国の犯罪集団の関与が疑われるようになり、中国人同士による誘拐や殺人などの犯罪が横行。結果『犯罪の温床』になってしまったというわけです」(全国紙記者)
オンラインカジノはカンボジアやラオスでもここ数年、急成長していたが、コロナ禍の影響で、多くの業者がオンライン詐欺に手を染めるように。高収入をうたった偽の求人広告でアジア各国から人をかき集め、監禁状態にして自国の言語で勧誘電話をかけさせるなど、強制的に犯罪に加担させることが横行していたという。
「そんなこともあり、フィリピン政府は先月16日の時点で、政府への手数料未払いで免許が取り消された業者などを営業停止にし、在留期限が切れている中国人従業員約300人を拘束。今回の措置では、POGO1業者当たりおおよそ200人前後の従業員がいるとされるので、強制送還される中国人は被害者を含め計約4万人に上ると推計されています」(同)
地元メディアによれば、今回の国外追放とPOGO関連の犯罪取り締まりについては、在フィリピン中国大使館も「全面的に支持する」との声明を出しているそうだが、
「中国は以前から中国人の財産と安全を危うくするとして、フィリピンにあらゆる形態のオンライン賭博を禁止するよう求めていたこともあり、今回の取り締まりについては、大歓迎のようです。ただ、地元の不動産コンサルタント会社の試算では、POGO撤退による住宅の賃料や所得税、公共料金などの経済損失は、およそ年4600億円ほどが見込まれるとする報道もあり、政府としては痛し痒しの大英断だったようです」(同)
フィリピンからの中国人4万人の強制送還は、10月中旬をめどに完了するようだ。
(灯倫太郎)